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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第45号

< 2019/9/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第45号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  見山 謙一郎(専修大学経営学部特任教授)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報

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1.巻頭寸言

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「自分のまちを守る」

 穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 千葉県を襲った大型台風は、送・配電設備等を破壊し大きな被害をもたらしている。これからは想定外といわれる自然災害が日本国中に発生する危険がある。
 辛いことだが自分のまちを守るために、風・雨・地震などの発生レベル度に応じた被害の状況を基礎的自治体自身が想定し、住民はもとより国や県・インフラ整備会社等に対して具体的な情報を発信し、役割に応じた対応策と責任を明確にしておく必要がある。

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2.リレートーク

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「なぜ、自治体SDGsなのか?」

 見山 謙一郎(専修大学経営学部特任教授)

 7月1日に、内閣府地方創生推進室から令和元年度の「SDGs未来都市」の発表があり、今年度は新たに31都市が選定されました。その中には、私がお手伝いをした?取県智頭町の「中?間地域における住?主体のSDGsまちづくり事業」も含まれており、今も来年度に向けて、いくつかの自治体のSDGs政策のサポートをさせていただいています。「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念は、地方自治体の政策理念や取り組みそのものであり、この点において、SDGsの価値観は、企業よりも、行政の方が受け入れ易いのかも知れません。
実際に、SDGsに取り組もうとする自治体は増えていますが、17あるゴールの最初にある「貧困をなくそう」の理解で苦慮するケースをよく目にします。そもそも「貧困」とは何でしょうか?
インドの経済学者アマルティア・センは、貧困を「収入の少なさ」ではなく、「個々人の基礎的な潜在能力の剥奪」と定義しました。また、イギリスの開発学者ロバート・チェンバースは、貧困要素の類型化を行い、物質的貧困以外に、身体的弱さ、外部環境や不足な事態に対する脆弱さ、孤立、政治力や交渉力を持っていないことなども貧困と定義しました。こうした貧困の定義は、発展途上国のみならず、日本にも当てはまるはずです。つまり、「誰一人取り残さない」為に、全ての人に「居場所(包摂)」と「機会(教育)」と「出番(雇用)」をつくることが、行政の役割だということです。更に述べると、SDGsの2から16に解決すべき社会課題として明記されていることは、全て貧困に繋がっている、ということなのです。

SDGs(Sustainable Development Goals)は、「持続可能な開発目標」と直訳されます。企業研修などでは、流されてしまうポイントですが、普段、大学生に対して講義をしていると「持続可能な、とは何か」、から説明をしなければなりません。三省堂のウェブ辞書を参照すると、「持続可能な」とは、「そのやり方が将来も継続できること」とあります。わざわざそんなことを言う訳ですから、今のままのやり方では行き詰りそうだ、ということまでは理解出来ます。更に、何が持続可能でないのかを考えて行くと、「持続可能な」という言葉は「開発」という言葉にかかっていることが理解出来ます。つまり、「持続可能性」と「開発(=発展)」という、二律背反するものが両立出来るのか、ということが問われているのです。これを突き詰めていくと、「環境保全」と「経済発展」は両立出来るのか、更には「将来世代」と「現役世代」の利益は両立出来るのか、という問題へと繋がっていきます。その為に、行政機関は、これまで以上に企業(産)や若者(学)と連携する必要性があり、このことが結果的にSDGsの17番目の目標(パートナーシップで目標を達成しよう)に繋がります。

行政機関は縦割りと言われますが、各部門が取り扱う社会的課題の根源を辿っていくと、根本的な部分では繋がり、関係していることばかりです。SDGsの視点を行政の政策に溶け込ませることで、部門間の関連性や共通課題の理解、認識から、部門間連携へと繋げることが出来ます。また、万国共通のSDGsの指標やアイコンで政策を可視化すれば、より幅広い層に行政の取り組みや、首長のメッセージを届けることが出来るはずです。最近は小学校や中学校でもSDGsを学ぶ機会が増えていますので、若い層を巻き込むことで、地域課題を自分ごととして取り組む“課題当事者”が増えていくことが期待されます。そして何よりも、持続可能な営みは、地方の細部に宿っており、それをSDGsという世界共通の指標で可視化、発信すれば、地方を世界にアピールする大きなチャンスになると思います。

見山 謙一郎(みやまけんいちろう)

専修大学経営学部特任教授、(株)フィールド・デザイン・ネットワークスCEO。三井住友銀行(旧住友銀行)に15年半勤務後、アーティストが設立した環境融資法人ap bank理事を経て、起業、独立。「想像から創造へ」をテーマに環境問題や地域活性化、途上国ビジネスの企画から実装までの支援業務に従事。環境省(中央環境審議会)、総務省(地域活性化)の委員の他、秋田県にかほ市、川崎市、前橋市、佐賀市等のアドバイザーをつとめる。
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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。

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台風15号によって露呈した生活インフラの脆弱さ

9月8日に関東地方を襲った台風15号は、これまで比較的台風の被害を受けてこなかった関東地方のインフラに大きな爪痕を残しました。
特に停電の復旧に長期間を要したことは、熱中症対策や集合住宅の断水など、これまで過去数十年の経験で「停電は早期に復旧するもの」と停電の影響を甘く見ていた関東地方の住民に、停電への備えの必要性を再認識させる機会になったのではないかと思われます。

https://mainichi.jp/articles/20190920/k00/00m/040/313000c

停電なぜ長期化したか 要員見通し東電誤算、現地到着阻んだ倒木
2019年9月20日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20190915/k00/00m/040/257000c

「人手が足りない…」弱る自治体の体力 台風被害の調査進まず 千葉
2019年9月15日 毎日新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49793730T10C19A9CC0000/

台風被害、東電・JRが陥った「楽観主義バイアス」
2019年9月13月 日本経済新聞

https://www.sankei.com/affairs/news/190919/afr1909190046-n1.html

住宅被害の全容把握進まず 県の初動対応に批判も 台風15号
2019年9月19日 産経新聞

https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20190919/1080007803.html

台風の初動対応 県が今後検証へ
2019年9月19日 NHK

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50065240Q9A920C1EA1000/

水道事業のもろさ映す 台風15号の大規模停電で断水 自家発電配備進まず
2019年9月20日 日本経済新聞

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4.イベント情報

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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

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お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
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