< 2019/10/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第46号 ■■
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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭寸言
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
伊地知 聡
(株式会社リバネス地域開発事業部サイエンスブリッジコミュニケーター)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭寸言
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「地方議会の役割と自然災害」
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
想定外の自然災害が日本各地を襲っているが、地方議会の姿がまったく見えない。
これからの地方議会は主要な課題のひとつに災害に対する対応を掲げ「地方政府が果たすべき役割と責任」を明確にする必要がある。
そのうえで、具体的な対応策を議会として議論し、議決したうえで、早期の実現を執行部に求めることが議会の果たすべき役割である。対応策の立案にあたっては住民の声を十分に活かすことは言うまでもない。
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2.リレートーク
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「地域に眠る研究や技術を新産業に繋ぐ仕組みとコミュニケーターの存在」
伊地知 聡
(株式会社リバネス地域開発事業部サイエンスブリッジコミュニケーター)
はじめまして、株式会社リバネスの伊地知と申します。
リバネスは、17年前に首都圏の理工系学生が立ち上げたベンチャー企業です。現在は、修士号・博士号取得者約70名で、祖業である理科教育から、研究開発、大学の研究成果の事業化など国内外で幅広く事業を展開しております。今回は、特に地域における産業創出と次世代育成の取り組みとして、都道府県単位で展開する「地域テックプランター」を紹介します。
テックプランターは、主に大学の研究成果に特化したビジネスプランコンテストです。ただ評価して賞金を出すことを主とはせず、優れた研究には、資金面、事業プラン、知財法務、外部連携など包括的に支援し、課題解決型の事業を創出しています。これは、東証一部へ上場した技術ベンチャー株式会社ユーグレナを、創業前から支援したノウハウを形式知化し、他の技術への応用を狙うという背景がありました。2014年にディープテック(ものづくり)領域を開催し、現在はバイオ、アグリ、マリン、メド(医療)の5領域まで展開しております。この取り組みの中で、事業化を目指す研究を全国に呼びかけた結果、優れた研究の多くが地方大学から集まってきました。そうして、私達は「地域に眠る優れた研究や技術」の存在に気づきました。
このテックプランターを地域で実施するきっかけは、熊本県から産業振興について相談を受けた際に、地方大学の優れた研究が地域の産業振興に繋がるのではないかと地域版のテックプランターを提案したことでした。その結果、熊本県、肥後銀行、熊本大学、熊本県工業連合会、リバネスの5者で構成する熊本県次世代ベンチャー創出支援コンソーシアムを発足し、2016年にスタートしました。これまでに122チームがエントリーし、その構成は約半数が大学の研究者や学生、もう半数が技術系ベンチャーとなっています。包括的なハンズオン支援の結果、現在7社が法人化し、13社が合計10億円以上の資金調達に成功しています。
熊本県の事例を契機に他府県からも要望を頂き、2018年度には9地域、そして2019年度は12地域へと広がりました。現在までに、大学発ベンチャーを始めとする新たな技術系ベンチャーが18社立ち上がり、資金調達に成功した企業が16社、さらに非公開情報も含めると50を超える共同研究が生まれています。数多ある事業化支援の取り組みの中で、リバネスのテックプランターがなぜこのような広がりを見せているのでしょうか。それはひとえに、研究経験を持ち、科学技術をわかりやすく伝える鍛錬を積み、必要な知識や人を橋渡しできる「サイエンスブリッジコミュニケーター」の存在です。この役割を担うスキルは、祖業である理科教育事業で子どもたちに鍛えられた経験があります。
地域テックプランターは、基本的には地域の方の要請ではじまります。地域ごとに課題感や組織事情も異なるため、自治体だけではなく、地方銀行や、100億円規模の売上がある地域オーナー企業が主導するなど、様々の予算体制で実施をしてきました。1度実施して継続していない地域もあります。これらの経験から、実施・継続に重要なのは立場に関わらず、その地域を愛する1人の情熱的なキーマンがいることに尽きます。そして、その方が中心となって、多様な立場の人をつなげ「10年後・100年後の地域を創造する」という共通のビジョンを掲げたチームを作ることです。それが、協定の締結やコンソーシアムを組織になる場合もあります。たとえ時間を要しても地域で技術ベンチャーを育てていくことで、世界を変革しうる産業を生み出すことにつながると考えています。また、熊本に続いて実施した滋賀県では、10年後のアントレプレナー育成を見据えて中高生の研究支援の取り組みにも注力しています。このように、テックプランターを軸とした地域活性化の取り組みは、他に例のない勢いで結果を出し始めています。本取り組みに興味をお持ちの方は、11月、2月に各地で行われる最終選考会「テックプラングランプリ」に見学にお越しください。
2019年度 地域テックプランター日程:茨城(11/19)、香川(11/26)、大阪(11/30)、宮崎(2/1)、栃木(2/8)、岡山(2/22)、鹿児島(2/22)
【参考リンク】
株式会社リバネス:https://lne.st/
テックプランター:https://techplanter.com/
伊地知 聡:株式会社リバネス 地域開発事業部 サイエンスブリッジコミュニケーター
大阪生まれ大阪育ち、大阪市立大学大学院工学研究科修了、修士(工学)。大学ではグリシルリチン酸誘導体を用いた甘味受容体構造決定の研究に従事。研究の傍ら、科学と社会を繋ぐ仕組みづくりに関心があり、議員インターンシップなどにも参加。リバネスでは、研究者と次世代を繋ぐ教育事業を軸とし、主に食品・化学系企業を担当。アジア最大級の中高生のための学会「サイエンスキャッスル 」を立ち上げる。現在は地域開発事業部に所属し、主に滋賀や大阪、沖縄を中心として産業創出、次世代育成に取り組む。
詳細:https://lne.st/2017/09/26/ijichi01/
問合わせ先:ijichi@lne.st (伊地知 聡)
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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水? 食料? 段ボールベッド? 避難所にどこまで求めるか
台風19号は西日本豪雨を超える浸水面積、東日本大震災を超える適用自治体数となる大災害となりました。
これまで避難勧告や避難指示が発令されても実際の避難者はわずかということが少なくありませんでしたが、今回の台風は9月の台風15号の被害が大きく報道されたことなどもあり、全国で多くの方が早い時期から避難されています。
このため、避難所が満員になる、急な冷え込みなど、いくつもの課題が浮き彫りになりました。
東日本大震災や熊本地震でも指摘されていることですが、多くの避難所が一斉に開設されると、地元市町村の職員が避難所の運営だけでかかりきりになってしまい、災害対策本部はもぬけの殻、職員が本来行うべき災害対策ができないという課題があります。
そこで、多くの市町村では住民による避難所の自主運営を目指して、避難所運営委員会を組織し、避難所運営マニュアルを作成しています。発災直後の3日から一週間を乗り切れば、他県などからの応援職員が到着します。
特に発災直後の72時間は救出活動などの命を守る仕事に市町村職員のリソースを集中投入できる仕組みこそが必要なのではないでしょうか。
★台風19号、避難所の「誤算」相次ぐ 浸水・満員・寒さ
2019年10月16日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51042310W9A011C1CC1000/
★避難所で想定外の事態 そのとき住民たちは…
2019年10月15日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191015/k10012132921000.html
下がる気温「うちで寝たい」「トイレが」 避難所ルポ
2019年10月16日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASMBH651ZMBHUTIL05S.html
★都内8万人が避難所で一夜 小池知事、被害把握を指示
2019年10月13日 産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/191013/afr1910130039-n1.html
★「どこにいけば」避難長期化も 台風被害の長野市
2019年10月15日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50995330V11C19A0CC1000/
★避難所への「ペット同行」どうすれば 対応にばらつき、「断られた」報告も
2019年10月14日 J-CASTニュース
https://www.j-cast.com/2019/10/14369980.html?p=all
★ホームレスの避難断る 台風19号で台東区「区民でない」
2019年10月13日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50957080T11C19A0CZ8000/
★浸水範囲、想定と一致 台風19号被害の福島・長野 ハザードマップ 避難に有効
2019年10月17日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019101702000286.html
★【台風19号】五輪にらみ「災害弱者」の外国人にも対応 翻訳機持参にツイッター発信…
2019年10月12日 産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/191012/afr1910120010-n1.html
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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
東京都千代田区神田佐久間町2-24-301
お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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