< 2023/3/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第87号 ■■
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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭言
穂坂 邦夫(財団法人日本自治創造学会 理事長)
2.お知らせ
第15回 日本自治創造学会研究大会5月24日(水)・25日(木)開催
「講師の横顔」
3.ニュース/情報ピックアップ
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1.巻頭言
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統一地方選挙と地方議会ーその1
穂坂 邦夫(財団法人日本自治創造学会理事長)
統一地方選挙が始まりましたが、地方議員の担い手がいないことが大きな懸念材料になっています。政府の「地方制度調査会」は様々な改革答申を打ち出していますが、いずれも現場の感覚と乖離し、しかも木を見て森を見ない感じがしてなりません。
私の経験からしますと、議員の担い手不足が問題だと言われていますが、この現象は2つに大きく分かれています。第一は県議会議員選挙における無投票の拡大です。無投票の多くは県議会の選挙区は分割されているため、立候補したい方々が多数いるにもかかわらず、1人区の選挙区では無投票になります。大多数の自民党所属議員が地盤をしっかりと固めていますので勝敗の帰趨を考え立候補しないのです。いわば無投票の原因は1人区にあると言ってもよいでしょう。私自身も経験しており、最初、激戦に勝利した後は、全て無投票となりました。県議会議員の報酬は比較的高額で、専門職として生活が出来ますし、政務調査費も活用できるので、十分な政治活動が保証されています。ですから複数区の選挙区では立候補者は多く、現在でも大多数が激戦区となっています。第二は市議会議員ですが、3万人以下の過疎地の市議会を除くと都市部においては無投票というのは極めてまれです。政令指定都市は選挙区が分割されるので県議会議員と同様の現象が起きています。第三の問題は切実で、町村議会議員の担い手不足です。多くの町村は
過疎化が進み、報酬はとてつもなく低く、政務調査費もほとんどがついていません。しかも議員としての様々な規制は県議会や都市部の市議会と同じ様に厳しく、議会の運営も同様です。どんなに少数であっても与野党や政党に分かれて活動しています。
このように報酬の多寡と小選挙区制の有無によって無投票や議会の欠員が出ていますが、最大の問題は、地方議会議員の権能が小さく、魅力がないことに尽きます。地方自治体は首長の権限が大きく、そのうえ議会が政党や与野党に分かれて運営されています。実態と乖離して存在する地方自治法にその原因があると言っても過言ではありません。絵に書いたように、理想的で現実と大きく乖離した地方自治体における二元代表制の制度設計です。この解決策はどこにあるのでしょうか。(以下、次回)
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2.お知らせ
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第15回 2023年度 日本自治創造学会研究大会が開催されます!
【大会テーマ】
DX時代の地方創生〜“自治力”を高める〜
日時:2023年5月24日(水)・25日(木)
場所:明治大学アカデミーコモン棟3階 アカデミーホール
(東京都千代田区神田駿河台1−1)
★研究大会でご登壇いただく講師の皆様を御紹介します
「講師の横顔」
《第1日目・5月24日(水)》
〇益 一哉 DX時代の日本の原動力を考える
“日本の将来を見据えて理工系大学と医系大学の大合併を推進”
益さんは東京工業大学の学長を務められている電子通信工学者です。2000年に東京工業大学 精密工学研究所 教授に着任された後、同大学科学技術創成研究院長を経て、2018年から学長に就任。教育改革を推し進める中、2022年には東京医科歯科大学との統合を発表するなど、注目を集めています。
〇石川 雄章 社会インフラ管理の重要性と人材育成
“人口減少化におけるインフラ整備に切り込む”
石川さんは株式会社ベイシスコンサルティングの代表取締役社長を務められるとともに、北海道大学の客員教授を務められています。1985年に当時の建設省に採用後、高知県の情報戦略推進担当理事や国土交通省の東京国道事務所長などを歴任後、2007年、東京大学大学院情報学環の特任教授に着任され、2021年からはICT等の先端技術活用のコンサルティングを行う現在の代表取締役社長に就任しました。
〇田村 琢実 新たな議会の挑戦〜議員政策条例の推進〜
“新たな地方議会の存在意義を住民に示す”
田村さんは埼玉県議会議員を4期務める政治家です。衆議院議員秘書を経て、2007年の初当選以来、これまで4回の当選を重ね、令和2年3月から令和3年3月までは、第123代県議会議長も務められました。議員提案条例に積極的に取り組み、2022年には、性の多様性(LGBTQ)条例を提案・可決させ、大きな注目を集めました。
〇穂坂 邦夫 埼玉県議会へ問う“地方議会のあり方”
穂坂当学会理事長は埼玉県職員、足立町(現志木市)職員を経て、志木市議会議長、埼玉県議会議長を歴任した後、2001年7月に志木市長に就任。25人程度学級やホームスタディ制度の実施、地方自立計画を策定すると共に市町村長や教育委員会、収入役の必置規定の見直しなどを求め全国の注目を集めました。
〇清水 聖義 教育と音楽とスポーツの個性あるまちづくり
“地方から国を変える・地方の力を市民に伝える”
清水さんは群馬県太田市長を8期務める政治家です。大田市議会議員、群馬県議会議員を経て、1995年に新庁舎建設工事見直しを公約に掲げて旧太田市長に就任。3期務めた後、2005年には合併後の新太田市の初代市長に就任後、5期を務められています。
〇宮元 陸 スマートシティの新たな挑戦
“人口減少時代のまちづくりに挑戦する”
宮元さんは石川県加賀市長を3期務める政治家です。衆議院議員秘書を経て、1999年、石川県議会議員に初当選。4期務めた後、2013年、加賀市長に就任後、3期務められています。スマートシティの取組に注力し、2022年には国家戦略特区である「デジタル田園健康特区」に北陸で初めて認定されました。
〇中村 一郎 「ひと・まち・未来が輝き世界につながるまち」を目指して
“地域を見つめる確かな力の挑戦”
中村さんは岩手県盛岡市の副市長を務められています。1979年に岩手県庁に入庁後、政策地域部長、復興局長などを歴任し、東日本大震災からの復興などに尽力され、県退職後は、2016年から三陸鉄道の社長を務められ、2022年には盛岡市の副市長に就任されました。
《第2日目・5月25日(木)》
〇渡部 晶 地域の活性化と組織の自立・連携
“地域力の強化を推進する様々な施策づくり”
渡部さんは現在、財務省大臣官房政策立案総括審議官を務められている官僚です。1987年に当時の大蔵省に採用後、福岡市総務企画局長、沖縄振興開発金融公庫副理事長、財務省大臣官房公文書監理官などを経て、2022年から現職。福島県平市(現いわき市)生まれで、いわき応援大使も務められています。
〇奥 正親 出生率2.95人口維持のまちづくり〜町全体での子育て〜
“人口減少に住民と共に立向かう地方の力”
奥さんは岡山県奈義町長を2期務める政治家です。同町総務課長などを歴任し、2019年に町長に就任。高校生の就学支援や、多子の保育料軽減など手厚い子育て支援によって、2019年の合計特殊出生率が2.95となった「奇跡のまち」として全国に知られ、岸田首相も視察に訪れています。
[パネルディスカッション 自治力を高めるには!]
〇牛山 久仁彦
“様々な地域づくりを直接参加で実践”
牛山さんは、当学会の理事でもある明治大学政治経済学部の教授です。専門は、政治学(行政学、地方自治論、地域政治論)で、地方分権改革と地方政府研究、自治体経営と地方政府再編などを研究テーマとしています。『広域行政と自治体経営』(ぎょうせい・編著)などの著書があります。
〇後 房雄
“地方自治に政治を復権させる”
後さんは、当学会の理事でもある愛知大学の教授です。専門は、 政治学、行政学、NPO論で、名古屋大学法学部教授を経て、現職。公益社団法人日本サードセクター経営者協会の代表理事などを務められています。
〇金井 利之
“自治に対する率直で、鋭い分析を展開”
金井さんは、当学会の理事でもある東京大学大学院法学政治学研究科の教授です。専門分野は都市行政学で、関心分野は自治制度、自治体行政、法務管理、財務管理、人事管理、自治体・住民関係、オランダ行政全般等。2021年に『コロナ対策禍の国と自治体 災害行政の迷走と閉塞』(筑摩書房)出版するなど著書多数。
〇宮台 真司
“核心を大胆に指摘する社会学者”
宮台さんは、当学会の理事でもある東京都立大学人文社会学部の教授です。社会学者として、権力論、国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などの幅広い分野に精通し、『14歳からの社会学』(筑摩書房)など著書多数。
〇西出 順郎
“政策検証の重要性を厳しく指摘”
西出さんは、当学会の理事でもある明治大学公共政策大学院の教授です。専門は行政学で、政策(行政)評価および公共(行政)経営などを研究テーマとしています。2020年に単著で出版した『政策はなぜ検証できないのか』(勁草書房)などの著書があります。
▼お申込み・プログラム等の詳細はこちらです▼
https://jsozo.org
※ご参加をお待ちしております
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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統一地方選スタート。なり手不足、ジェンダー、セクハラ……山積する課題はどう影響するか?
いよいよ統一地方選挙がスタートしました。対象となっている議員の皆様はさぞお忙しいことと思います。
さて、人口の高齢化に伴い、地方議員のなり手不足問題はますます深刻になっています。「学芸会」との批判に向き合うためにも議論活発な議会のあり方が問われます。
一方で、これまでの高齢男性中心の地方議会が住民を「代表」できていたのか、との指摘に対しては、女性や若者が地方議会にどうして少ないのか、何が障壁になっているのかを真剣に考えなければなりません。
★データでみる統一地方選 なぜ「統一」なのか 地方議会の現状は…
2023年3月23日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/239212?rct=politics
★原稿読み合う「学芸会」、緊張感ない “年4場所”の定例会改め通年に 元鳥取県知事・片山善博氏が直言(前編)
2023年1月24日 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20230124-O6YEX7DNUNOD3BIDBYBODT2AHE/
★住民との接点は議場、「開かれた議会」への改革を 元鳥取県知事・片山善博氏が直言(後編)
2023年1月31日 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20230130-I64GIIOWGBKZ5JSC5AJIOL26LU/
★地方議会役割明確化 改正案 非正規公務員に勤勉手当
2023年3月3日 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20230303-PN74HA2PW5MIRJE2OBTX6IIP3M/
★「地方議員、なり手不足」63% 全国議長調査、18年比11ポイント増 共同通信調査
2023年1月29日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230129/ddm/001/010/099000c
★大卒初任給以下なのに…地方議員の報酬、引き上げになぜ二の足?
2023年3月23日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230323/k00/00m/010/092000c
★女性ゼロ、少ない若者…地方議会の実態、独自調査で「見える化」
2023年3月22日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASR3M3QK3R3KDIFI006.html
★首都圏地方議会の女性比率、「均等」になお遠く…最高でも東京の30% 北関東3県は全国平均下回る
2023年2月5日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/229360?rct=chiba
★「選挙でお尻触られた」女性議員7割「票ハラある」 男性の1.3倍
2023年2月22日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230222/k00/00m/010/359000c
★7割はセクハラ対策「講じていない」 地方議会の環境、改善された?
2023年2月24日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASR2P4VCWR2POXIE00L.html
★ハラスメント独自対策、議会3割 議員研修が最多、相談窓口わずか
2023年3月4日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/234687?rct=national
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発行:財団法人日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
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お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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