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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第88号

< 2023/4/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第88号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  加納 孝祐(学生団体GEIL23代表)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
  日本自治創造学会 第15回研究大会開催【参加申込受付中】
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1.巻頭言
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          統一地方選挙と地方議会—その2
大胆な地方制度改革を断行する“木を見て森を見ない改革は限界では”

                       穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 統一地方選挙が終わりました。都市部における首長選や3人区以上の議員選挙は激戦のところもありましたが1人区では無投票が多いうえ、投票率は低空飛行を続けています。一方の地方の市町村長、議員選挙は共に低調で無投票や議員の担い手不足が浮き彫りになりました。自治体に対する住民の政治離れが顕著になっています。
 都市の低投票率や地方における議員の担い手不足はどんな理由があるのでしょうか。地方の過疎化もその理由のひとつですが、全体的には「地方自治制度」の根幹が原因ではないでしょうか。具体的には、現在の「二元代表制」が地域の住民に受け入れられていないことが最大の要因ではないでしょうか。
 私は市議会議員、県議会議員、市長を経験していますが、現行の二元代表制では首長の権限が強すぎて地域住民の視線には国政の議院内閣制による国会議員と異なり地方議員は首長の「添え物」と映っている懸念を感じてなりません。執行部と議会は車の両輪と言われていますが、現実には全く異なります。第一の理由は議会を構成する議員が自治法の理想にあるように、政策毎に意見が一致できる状況にはありません。首長の選挙や地方議員の政党化によって議員は会派によって与野党に分かれています。例えば、首長が予算や条例によって自らの意志を発揮しようとしている時、与党が過半数を占めていれば100%その意志を発揮することが出来ます。仮に少数与党の場合には各会派と意見を調整することで大多数の提案は議会を通ることになります。多数与党の中に反対の意見がある場合には事前に意見を聞くことで修正を行います。しかし、これらの調整の姿はアンダーグラウンドで行われますので住民には見えません。
 要するに自治法の根幹にある理想的な二元代表制は現実と余りにも乖離し、住民には選挙の時だけ議員の姿が見えますが、その期間が経過すると地方行政に映る姿は首長だけになり、議員の姿は消えてしまうことになるのです。議会・議員がクローズアップされるのは首長のスキャンダルや議会全体を無視した場合など特異な状況によるものです。
 地方制度調査会の改革答申は木を見て森を見ないことになり、仮に枝の何本かを切ったり曲げたりしても、住民の関心を取り戻すことは出来ません。首長は議会のことには踏み込むことを避けますし、議員は自らのことを「力がない」、「あっても住民の目に映らない」などと自己否定をするなど出来るはずがありません。そのため地方自身による抜本的な改革案が浮上することはないのです。
 地方制度調査会は地方行政の実態を知ると共に様々な住民アンケートなどを行って森全体の木を切り倒して、新たな木を植え替えるなど抜本的な地方制度の改革をしなければ、この傾向は今後ますます加速すると言っても過言ではありません。
(以下、「多様な自治制度の導入」は次回)
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2.リレートーク
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この夏、この国の未来に向かい日本の科学政策を議論する

                       加納 孝祐(学生団体GEIL23 代表)

 学生のための政策コンテストを開催する学生団体「GEIL」は、今年で24回目を迎えます。GEILOBの初期のころの代表達は霞が関から各県の総務部長に就任されています。GEILでは毎年夏休み終盤に全国の学生を公募し論文審査で選定された学生80名が代々木のオリンピックセンターで合宿形式で政策立案にチャレンジする政策コンテストを主催する学生団体です。開催のための事務局を担うのは、東京大学や一橋大学をはじめ関東地区の数々の大学の学生たちがメンバーです。GEIL活動は9月から12月までで、GEILの組織編制のための責任者(総務、ケース局、渉外局、運営局、広報局、学生対応局、財務課)は候補者スピーチを聞いて選挙で選びます。また、実施するコンテストのテーマ選びについては調査グループのプレゼン後、投票で決めています。年明けからコンテストに向かって、いくつかのプレイベントの準備や夏の本番でより良い議論の場にするための内部勉強会を頻繁に開催しています。主催者側としてもテーマについてはもとより、政策について、現状社会実態把握など幅広く学ぶためです。

2023GEILのテーマは「科学」と決定しました。

学びの場の講師は、霞が関の政策現場の方々やGEIL23のテーマの科学をいろんな角度から学ぶために様々な研究者、俯瞰的立場から科学を見つめる方などで、お話しを伺い質疑しながら学んでいます。
昨年暮れから、私たち学生は「そもそも科学とは何か?」というところからのスタートでした。様々な講師をお招きし、資料や著書を学びながら奮闘しています。
そのうえで、日本の「科学」が抱える課題を見つめていきたいと思いました。
日本の科学研究力の低下が、2000年を過ぎた頃から日本の論文数は停滞、減少していることが如実になっています。Top10補正論文数に至っては、20年前の4位から直近では10位と大幅な下落を見せています。
日本政府は科学技術立国の実現を謳ってきましたが、現実の日本の研究力は「質」、「量」ともに目を覆いたくなるような状況であるようです。
このような現状を打破するために、政府は多くの施策を打ち出してきたとしていますが、その多くが大学に対する表面的な財政政策に終始していたように思いました。現場からは「予算=研究の質」など言う意見もあり、財政的な面も大きいいでしょうが、果たしてそれだけで解決するものでしょうか。効果を生み出せていないのは「なぜ出だろうか?」と考える中で、問題はもっと本質的なところにあるのかもしれないという思いで、人間がそもそも「科学」というものをどのように生み出し、捉え、考えてきた歩みがあるのかを学んでみました。西洋で自然哲学から長い時間をかけて発展した近代科学への変遷を探り、その背景を洞察するためには、歴史、思想、哲学、文化なども理解できてないと見えてこないのだと痛感しました。近代では科学は資本と国民国家の支援の下、テクノロジーと強固に結びつき人々の暮らしの経済的利便性(と同時に災厄も)がもたらされました。日本は明治期に欧米列強の目に見える利便性の優れた近代工業化に圧倒され「富国強兵」を目指しました。科学というより科学が支えたテクノロジーに注目し、羨望し受容することになりました。
その結果、日本では「科学・技術」という言葉を生み出し、重点的に取り組んできた流れが現在に至っています。科学・技術は日本の近代化の立役者となった一方で、多くの負の資産をももたらしたのかもしれません。世界では「科学技術」はIT開発はじめ軍術費による高度テクノロジーの躍進的発展をもたらしました。一方で原爆という人類史に類を見ない悲劇を経験させられたり、最近では原発という科学技術のコントロールに失敗し、甚大な被害を被ってもいます。デジタル化の世界の潮流は目まぐるしい変化が進んでいる。日本はデジタル化でも後手に回っている現状があります。今「科学」や「技術(テクノロジー)」をどの様に受け止め、何をしていくのかをこの夏の政策コンテストに向かって学び考察しています。科学の事もテクノロジーの事も理解できる素地を身に付けておきたいと考えています。そのうえで、日本が培ってきた文化や伝統を踏まえ事実の中できちんと日本の特質を生かした取り組みを世界に示すことが出来るように考えます。
我々世代は、実は日本のことをちゃんと学んでいないと実感しています。「科学的思考」を身に付け、主体的に新しい社会を創り出すためにも先人たちの経験値や知恵を学び、理解することで歴史を未来に活かすために足元から学んでおきたいと思いました。何より世代にかかわらず江戸の人々の様に市井の人々が数学(和算)を楽しみながら高度なことにチャレンジしていた事実には感銘をうけました。「科学」を考察して、学ぶ楽しさ、わくわく感を育む体験、教育現場の在り方も創造性を尊重した場が大事だと今回気づかされました。GEIL活動では一人ひとりが各人の意志と能力を発揮出来る存在になりたいと、全力で奮闘中です。この夏の学生の政策コンテストでは、この国の未来に向かい日本の科学政策を根本から見つめる熱い議論を期待いただきたいと思います。全国の地方行政関係者や地方議員の皆さんにも9月3日13時からの「学生のための政策コンテスト」の最終発表会がありますので是非観覧いただければ光栄です。よろしくお願いいたします。

加納 孝祐(かのうこうすけ)
学生団体GEIL23 代表

東京大学経済学部3年生  https://waavgeil.jp/
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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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ChatGPTは行政で活用されるのか? 〜セキュリティーに危惧も〜

自然な会話ができるAIチャットサービスであるChatGPT。
今月、多くの中央省庁や自治体でのChatGPTの活用が発表されています。
業務効率化への期待が高まる一方で、不正確な回答や個人情報の漏えい等が危惧されています。
まだ発展途上の技術ではありますが、将来的には活用が不可避な技術ですので今後も事例や研究が積み重ねられていくことが期待されます。

★政府、ChatGPTなど活用 検討チーム設置へ
2023年4月14日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA14CI90U3A410C2000000/

★行政機関も「ChatGPT」 神奈川の市役所では“全国初”業務導入
2023年4月20日 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230420/k10014043781000.html

★農林水産省、ChatGPT活用へ マニュアル更新など
2023年4月18日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA189IS0Y3A410C2000000/

★農水省が4月中にも中央省庁初のChatGPT利用、先陣切って実際の業務で使うワケ
2023.04.14 日経クロステック

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02423/041300003/

★省庁でChatGPT活用「検討」相次ぐ 精度など課題
2023年4月21日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA211EL0R20C23A4000000/

★総務省、ChatGPTを試用 松本総務相が表明
2023年4月20日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA203FD0Q3A420C2000000/

★市役所でどう使う?“行政初”試験導入へ 横須賀市に聞く『ChatGPT』活用法
2023年4月19日 テレビ朝日

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000296122.html

★チャットGPTを広報文などに試験導入 神奈川・横須賀市で
2023年4月18日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20230418-W7LVX5HDINOT3MCNQVLM2YGVHY/

★戸田市が「ChatGPT」の自治体業務利用のガイドを作成・公表へ
2023年4月18日 日経クロステック

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/15017/

★鳥取県、業務ではChatGPT禁止 知事「ちゃんとジーミーチー」
2023年4月20日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASR4N4TS2R4NPUUB004.html

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4.イベント情報
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第15回 2023年度 日本自治創造学会研究大会開催【参加申込受付中】

【大会テーマ】
DX時代の地方創生〜“自治力”を高める〜

日時:2023年5月24日(水)13:00〜17:30
          25日(木)10:00〜15:05

場所:明治大学アカデミーコモン棟3階 アカデミーホール
  (東京都千代田区神田駿河台1−1)

参加費:会員13,000円(年会費2,000円・2日間大会参加費11,000円)
    ※大学院生会員参加費2,000円(年会費2,000円・2日間大会参加費無料)
    非会員15,000円(2日間大会参加費)
    ※大学院生非会員参加費3,000円(2日間大会参加費)

▼お申込み・プログラム等の詳細はこちら▼
 http://jsozo.org/

お問い合わせ・事務局TEL03−5846−9227
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
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