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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン 新年特別号

< 2023/1/1>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン新年特別号 ■■

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【新年の御挨拶】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                    穂坂 邦夫 (日本自治創造学会理事長)

 あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
 昨年はコロナに加え、ロシアのウクライナへの侵攻や度重なる北朝鮮のミサイル実験、中国における軍事的圧力の増大が重なり、国防の強化が議論され、将来における防衛費の増大が予定されています。既に2023年度予算において防衛費が増額され、さらにロシアに対する経済制裁や円安の影響で物価が上昇し、これらへの対応や少子高齢化の加速による福祉予算の増額など、歳出の拡大を余儀なくされています。
 皆様も御承知の通り国家の基盤は地方にあると言われています。内外における財政環境の悪化に対して、地方の有り方についても真剣に取り組まなければなりません。特に本年は4年に一度の統一地方選挙の年にあたっています。平成の大合併等もあって、該当する地方自治体が減少しているとは言え、国民の関心を呼ぶことの出来る絶好の機会であることは言うまでもありません。

・地方改革の限界
 地方の改革については議会を中心に地方制度調査会(以下、地制調)が改革の答申を重ねていますが、いずれも地方の全体像を視野に入れない「木を見て森を見ず」の改善案に終始しています。コロナ対策等により国の財政支援が急増し、地方財政の黒字化が顕著になっていますが、国任せの黒字化と言っても過言ではありません。
 歳出の拡大に対して今まで以上に国債の発行を積極的にすべきとの議論もありますが、無尽増に増加するというわけにはいきません。イギリスで起きたような財政の悪化が国債の大暴落に直結することは、国内消化率の高い我が国では考えられませんが、極端な財政悪化は国際的信用の低下につながるため、避けなければなりません。増税が限定されることを考えますと、国は地方に対する財政負担の軽減策を取らざるを得ない状況が考えられます。地方は人口の大小にかかわらず、過大な行政経費を必要とする二元代表制を堅持しています。しかし、二元代表制の維持にも様々な問題が起きています。

・地方議員のなり手がいない「二元代表制の現実」
 現実的な課題は地方議会の議員に「なり手がいない」という現象です。地方議員のなり手がいないため、各所で無投票選挙が拡大すると共に「定数の不足」が顕在化しています。地制調は兼業制限の緩和などを答申していますが、いずれも小手先の改革に終始しています。議員のなり手がいない最大の原因は、現行制度において議会と首長の権限が対等と位置づけていますが、実態は首長の権限が際立って大きく、一人一人の議員が活躍する場が極めて狭小なため存在意義を見いだせないことに起因しています。これらの状況に加え、住民も地方議員に対する期待感を失ってしまったことが重なっています。
 我が国の基礎的自治体も二元代表制が機能していない実態と厳しい財政危機に直面することを考えますと欧米諸国のように、多様な自治制度を採用することが現実になってきます。日本は首長と議会の二元代表制が全ての自治体に規定されていますが、アメリカを例にとりますと、弱市長制、支配人制(シティマネージャー制)、強市長制、委員会制、町総会制などがありますが、その中でも支配人制(シティマネージャー制)は人口25,000以上の自治体の約60%、10,000人以上の自治体の60%弱、5,000人以上の自治体では約50%が採用しています。議員の担い手がいない現実に加え、二元代表制を維持するのに膨大な行政経費がかかっていることを再認識する必要があります。我が国は二元代表制が地方の民主主義を守る唯一のシステムだと考えられていますが、アメリカはもとよりヨーロッパにおいても多様な地方制度が取り入れられ、民主主義をしっかりと守っています。       
 「日本の自治体における二元代表制は諸外国に比較して優位性が高く、維持すべきだ」と主張する有識者も多いと思いますが、人口300万人を超える横浜から人口1,000人の村に至るまで同じ二元制に固定する現行のシステムは人口の減少、過疎地域の増加などの社会の激変や議員希望者の減少による無投票の増大、議員定数不足による二元代表制の機能の低下や膨大なシステム維持費を考えますと、多様な自治制度を導入するような抜本的な改革が求められています。             

・シティマネージャー制度の提案
 私は市長時代に「日本型シティマネージャー制度」の導入を国の構造改革特区を活用して提案をしました。二元代表制の理想と現実が大きく乖離しているからです。現行制度は首長と議会の双方に政策機能を与えているため、仮に両者の機能が十分に発揮されれば首長と議会が衝突するか、あるいは行政サービスの歯止めのない膨張が生まれてきます。
 直近の国と地方の財政は、お互いが約100兆円の規模を有し、地方は都道府県と市町村が50兆円ずつ2分していました。我が国の歳出圧力は益々上昇します。小手先の改革ではなく、抜本的な地方の制度改革を行い活力ある地方政治を実現することが急務です。
 本年も地方の自立と個性ある自治体づくりに取組んでまいります。皆様の御協力、御支援を心からお願い申し上げます。
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

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お問い合わせ: info@jsozo.org

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