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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第84号

< 2022/12/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第84号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(財団法人日本自治創造学会 理事長)
2.リレートーク
  日置 圭子(地域文化企画コーディネーター/株式会社粋まち代表)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.お知らせ
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1.巻頭寸言
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           「地方制度の大改革」

                   穂坂 邦夫(財団法人日本自治創造学会理事長)

 国家財政に対する歳出圧力は防衛費の増額だけでなく、高齢化の加速や人口の減少に歯止めをかける子育て支援策などによって年々高まっています。
 これらに対応するためには、今まで避けて通ってきた地方における「二元代表制」にメスを入れ新たな方策を考えることが急務です。制度における理想と実態の乖離のために議員の担い手が減少し、各地域で無投票が拡大するなど議員不足に陥っているからです。
 現在の地方制度は自治体の大小にかかわらず一律的に二元代表制が実施されていますが、中小の基礎的自治体については機能していない実態と厳しい財政危機に直面することを考えますと、欧米諸国のように多様な自治制度を採用することが現実になってきます。アメリカを例にとりますと、弱市長制、支配人制(シティマネージャー制)、強市長制、委員会制、町総会制などがありますが、その中でも支配人制(シティマネージャー制)は人口25,000以上の自治体の約60%、10,000人以上の自治体の60%弱、5,000人以上の自治体では約50%が採用しています。議員の担い手がいない現実に加え、現行の二元代表制を維持するのに膨大な行政経費がかかっていることを私達は再認識する必要があります。我が国は二元代表制が地方の民主主義を守る唯一のシステムだと考えられていますが、アメリカはもとよりヨーロッパにおいても多様な地方制度が取り入れられ、民主主義をしっかりと担保しています。       
 「日本の自治体における二元代表制は諸外国に比較して優位性が高く、維持すべきだ」と主張する有識者の意見も多いと思いますが、人口300万人を超える横浜から人口1,000人の村に至るまで同じ二元制に固定する現行のシステムは人口の減少、過疎地域の増加などの社会の激変や議員希望者の減少による無投票の増大、議員定数不足による二元代表制の機能の低下や膨大なシステム維持費を考えますと、多様な自治制度を導入するような抜本的な改革が必要です。活発な議論を期待しています。 
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2.リレートーク
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   「地方と東京都心の真に豊かなつながりを求めてー富山県南砺市と東京・神楽坂」

          日置 圭子(地域文化企画コーディネーター/株式会社 粋まち代表)

 皇居も程近い東京都心・神楽坂に住み、まちづくり活動に携わって20年になります。まちも人生と一緒、長い年月の中では良い時も悪い時もあり、私が関わり始めた頃の神楽坂は、周辺の会社が休みの日曜には人通りもまばらな“沈滞期”ともいえる時期でした。そこから20年、地域を愛する人たちが常に神楽坂らしいまちづくりを目指して動く神楽坂は、時代の追い風もあって、商・住・文化のバランスのとれた「江戸情緒を残す坂と路地のまち」として、賑わいを取り戻していきました。
 私もそうした活動の一端を担いながら、同時に各地の地域活性化に取り組む方々との交流の機会も増えていく中、それぞれの土地の歴史、文化、暮らしの魅力、何よりそれをまもり継承している方々の魅力に心奪われ、敬意さえ感じることも度々でした。
 もちろん神楽坂も「伝統と現代がふれあう粋なまち」を目標として、伝統を生かすまちづくりを進めています。しかし、ここはやはり東京の中心。歴史を継承しながらも常に先端的な情報を得、変化していく街でもあります。地方の方々が暮らしの中で深くゆっくりと育んできた魅力を知り、体感することは、都市部の人々にとってどれほど豊かな経験となるだろうか。そのために、外国人を含む老若男女、多様な人々が集まり、発信力もある神楽坂で何かできることがあるのではないか。そんな思いが次第に頭の隅を占めるようになっていました。
 2012年、たまたまの縁で富山県南砺市城端の曳山祭を知ったのはそんな時でした。伝統工芸の粋を結集した絢爛豪華な山車を引き回し、それを祇園や吉原のお茶屋を模した精巧な「庵屋台」が先導する。中からは笛、三味線が囃す若連中の繊細、優雅な「庵唄」の唄声。こんな素晴らしい祭が、300年変わらぬ姿で継承され、しかも全国的には殆んど知られていないという衝撃! 過度な観光化もせず地元の方々が大事にまもり継承したからこそ、江戸時代のままの姿で続けてこられた奇跡! 「土徳(どとく)」と称される豊かな自然と精神土壌、土地の素材、伝統の技、人々の営み。この土地の奥深さに心底魅せられた私は、友人知人も巻き込みながら東京から何度も通い、城端を含む南砺市と神楽坂のご縁づくりに邁進していたのでした。

【都市住民とともに祭の景観をまもる】
 城端との交流を重ねる中で、曳山祭の舞台となる歴史的町並み景観が破壊されてはいけないと、地元の方々と首都圏を中心に趣旨への賛同者が協力して景観をまもる活動を始め、「一般社団法人 城端景観文化保全機構」を立ち上げました。この機構で買い取った元お茶屋と旅館だった空き家2軒を再生し、祭りの所望宿や庵唄練習等の祭礼関係および、町会や勉強会、そして民泊事業も含めた宿泊施設として利用されています。

【城端曳山祭・庵唄の神楽坂への招致】
 神楽坂の伝統芸能祭「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」(※)に2014年から城端曳山祭を毎年招聘。庵唄若連中が城端の路地を練り歩く様子を神楽坂で再現し、大きな人気を博しています。そもそも庵唄は江戸から伝わった端唄が城端で受け継がれてきたもの。まさに“江戸への里帰り”です。

【神楽坂における南砺市PR活動へ】
 これらのご縁で、神楽坂における通年での南砺市PRを担うことになりましたが、我々が拘り続けているのは、南砺市大好きな神楽坂の人たちが、勝手に(?)PRさせてもらっているということ。これは神楽坂チームの正直な思いを形にしたかったからです。
南砺市7地域をモチーフに七変化する猫のキャラクター「にゃんと氏」を制作してPR活動をしていますが、このにゃんと氏は神楽坂出身。石畳の路地あたりの生まれでありながら、背中の模様は南砺市域の図柄。その縁から「地域おこし協力隊」として南砺市へ。にゃんと市観光協会(南砺市観光協会)に所属して、暮らしと人にフォーカスした“にゃんと氏目線”のSNS四コマ漫画等でPR活動をしています。
 10月、海外からの参加者も含めて大いに盛り上がる一大イベント「神楽坂化け猫フェスティバル」(猫の仮装版ハロウィン)には、南砺市五箇山の伝統「こきりこ ささら踊り」もコラボ参加し、何十匹もの神楽坂の化け猫たちが笑顔笑顔で“ささら”を持って踊りました。その翌週には、今度は化け猫たちが南砺市に出張しての「にゃんとコスプレサイクリング」を実施。他にも、神楽坂での南砺市物産ブースの出展など、次々新しいアイディアも生まれ、それを1つ1つ形にしていくワクワクする日々が続いています。
 神楽坂との交流をきっかけに南砺市に旅行やワーケーションに行く人は増え、中には二拠点居住を始めた人もいます。今後移住者も出てくるかもしれません。南砺市の方が神楽坂にお越しの機会も増えました。互いの地域に魅せられて、日常的な交流や連携を続けていく。私が思い描いていた地方と都市の真に豊かな繋がりが少しずつ実現しています。

(※)主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京/NPO法人粋なまちづくり倶楽部、助成・協力:東京都。2013年から年1回開催。来場者は約4万人。2020〜22年はコロナの影響で庵唄招致はなかった。

にゃんと市観光協会 https://nyantoshi.jp/
南砺市観光協会 https://www.tabi-nanto.jp/
城端曳山祭(とやま観光ナビ) https://www.info-toyama.com/events/40010
神楽坂化け猫フェスティバル https://bakeneko.oops.jp/

日置 圭子(ひおきけいこ)地域文化企画コーディネーター/株式会社粋まち代表

2004年より、NPO法人粋なまちづくり倶楽部副理事長、まちの文化祭「神楽坂まち飛びフェスタ」実行委員長として、神楽坂のまちづくり活動に携わる。2007年に(株)粋まちを設立して、地域の文化を活かしたまちづくりの事業的展開に取り組んでいる。2013年からの富山県南砺市をはじめ、地方と都市との協働による文化・観光企画やまちづくりに関わることも増えている。地元新宿区では、新宿フィールドミュージアム協議会運営部会座長を務める。
株式会社粋まち https://www.ikimachi.co.jp// 
NPO法人粋なまちづくり倶楽部 https://ikimachi.net/
神楽坂まち飛びフェスタ https://machitobi.org/
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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熱血教師の部活指導はいつまで続くのか? ──消えていくスポ根ドラマ──

1970年代から80年代にかけて、部活動や生徒指導に熱い想いをかける熱血教師のドラマが多く作られました。特に部活動の顧問が情熱をもって生徒たちを指導して甲子園や花園をめざすストーリーは、校内暴力の嵐が吹きすさぶ中、持て余す生徒たちのエネルギーを正しく導くものとして、「愛のムチ」を含んだ熱血指導までも望ましいものとして社会に受け容れられていたように思えます。当時の生徒自身にとってはたまったものではありませんでしたが。
このような風潮の中で、体育教師を中心とする部活動に熱心な教員は、実績につながる「戦力」となりうる生徒たちを厳しく鍛え上げ、大会で好成績を残し、部活動大好きな生徒たちはやがて教員となって学校に戻り、次世代の指導者になっていくという「好サイクル」が生まれ、部活動は盛り上がっていったのですが、こうしたサイクルに乗れない「戦力外」の生徒たちにとっては、部活動や体育の授業は苦痛と屈辱以外の何物でもなく、大量の「体育嫌い」を生み出してきたのでした。
その後、ベテラン教員たちが退職し、学校現場では教員の働きすぎ問題がクローズアップされる中、「部活大好き教師」と世間一般との間のギャップがどんどん大きくなり、文部科学省もいよいよ部活動問題に手を付けざるを得なくなったものと思われます。

★休日の部活、地域移行しても教員が指導? 先行実施で浮かんだ課題
2022年12月11日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQD94H14QD2UTIL02G.html

★14時間勤務に休日なし「後悔ない」けれど 熱血教員の部活への思い
2022年12月10日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQD55RHQQ8MUTIL02P.html

★「教員はダメ」離れていった相手 部活顧問を掛け持ちする教諭の孤独
2022年12月8日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQD55WC4Q91UTIL01Y.html

★残業120時間、遠すぎる私生活の充実 部活を掛け持つ教諭の孤独
2022年12月8日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQD55WC4Q91UTIL01Y.html

★「部活の顧問をやめたい」 職員会議に流れた沈黙、先生の決断の代償
2022年12月7日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQD55R2ZQ92UTIL03J.html

★部活動の地域移行、指導者確保に汗 アメリカは講習充実
2022年11月3日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE09AB90Z00C22A5000000/

★なくせ部活指導者の暴力 現場の取り組みは
2022年12月23日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20221223-WDQRJS2O5FIYHGW7USX57V7PYA/

★体育が嫌いだった体育の先生 どきっとした言葉と子どもの気持ち
2022年11月22日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQCP3QZ7QCKULEI00R.html

★「男子だから耐えろ」と言われて 体育の苦い思い出、整理ついた瞬間
2022年11月20日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQCL45Q2QCGULEI003.html

★体育嫌い、女性に多いのはなぜ? 苦手でも運動を楽しめる教育とは
2022年11月16日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQCG3TMXQC9ULEI006.html

★体育の評価、実は変わった 実技が苦手でも高評価な子は増えるのか
2022年11月12日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQC940WJQC1ULEI00F.html

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4.お知らせ
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☆Yahoo!ニュース個人オーサー穂坂邦夫理事長の記事掲載ページのご紹介

現在、「地方公務員への提言30」の記事を連載中です。多くの方々に読んで戴き、地方公務員の改革資料にしていただけたら幸いです。
記事一覧のページはこちら→ https://news.yahoo.co.jp/byline/hosakakunio
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発行:財団法人日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
東京都千代田区神田佐久間町2−24−301
お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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