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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第80号

< 2022/8/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第80号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会 理事長)
2.リレートーク
  中村 一郎(三陸鉄道株式会社 前代表取締役社長)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭寸言
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              地方議会の挑戦
          〜新たな議会活動を展開する〜

                       穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 私が地方議員に初当選した時代は、先輩議員から「議会は執行権を侵してはならない」とよく言われました。言わば、議会は受け身であるべきだとの感覚です。しかし私は反対の意見です。特に時代が大きく変わろうとしている現在、私が考える地方議会は政策決定機能であると共に政策立案機能を発揮しなければいけないと思います。そうでなければ、議会はいつまで経っても受け身であり、首長の陰に隠れていると住民からは見えてしまいます。これからの新たなまちづくりについて政策立案機能をどのように発揮するかが問われていると言っても過言ではありません。
 住民に近い多様な政治姿勢を持っている地方議会が様々な「まちづくりの新たな形」や「予算の配分」について積極的に執行部と住民に提案する。首長は個人が持つ政治信条から自分なりの政策を立案し住民に理解を求めていますが、時には議会の意見によって政策を修正することもあるでしょう。時には議会と政策について対峙する行政の姿があるでしょう。これからは議会の意志を積極的に発揮することが必要です。
 国は地方を交付税や補助金によって「一律的護送船団方式」による運営を目指しています。しかし、政策について市長部局と議会が対等で緊張した新たな関係を築くことによって、個性あるまちづくりが展開されることでしょう。そして、首長と議会の積極的な議論から生まれる新たなまちづくりが住民の期待に応えると共に、確かな地方の展望に結びつくと確信しています。
 地方議会がリーダーシップをとり、従来の受け身的慣行を脱皮して、新たな発想のもとでの議会活動を展開し、「真の二元制によるまちづくり」が実現するのではないでしょうか。そして、行政と議会の姿勢は住民の方々に議会の必要性を認めさせると同時に、住民がまちづくりに関心を持つ、特効薬となることでしょう。
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2.リレートーク
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      「光り輝く三陸を目指して〜三陸鉄道の挑戦〜」

                中村 一郎(三陸鉄道株式会社 前代表取締役社長)

 三陸鉄道は、岩手県沿岸部を走っていた旧国鉄路線を引き継ぎ、昭和59年に第三セクター鉄道として運行スタートした鉄道である。
 2011年3月の東日本大震災津波で大きな被害を受けたが、全国の皆さんのご支援のお陰で3年後の2014年には全線運行再開を果たした。その後、2019年3月にJR山田線(宮古・釜石間)の移管を受け、それまで南北リアス線として2つに分かれていた路線が三陸鉄道リアス線として1本に繋がって新たなスタートを切り、全国から多くのお客様が来てくれた。その祝福ムードも束の間、今度は、同年10月の台風19号により全体の7割の区間が運休となる大きな被害に再び見舞われた。こちらも社員はもとより多くの皆さんの尽力により、2020年3月に全線復旧を果たし、これからと意気込んだ矢先に、今度は新型コロナウイルスが立ちはだかった。

 2020年度、2021年度は、新型コロナの影響もあり運輸収入が2019年度対比で約6割となる厳しい状況であった。
 季節に応じ、いろいろな企画列車の取組も行っているが、その一つが震災学習列車である。東日本大震災の記憶や教訓を風化させることなく、次の世代や多くの皆さんに語り継ぐとともに、近年頻発している大雨等の自然災害に備え、防災意識の向上にもつなげるため、震災当時の様子や復興状況を列車内で説明する震災学習列車を運行しながら、防災について考えてもらう機会を提供している。

 また、復興事業の一環として完成した三陸沿岸道路や宮古盛岡横断道路により、内陸部はもとより仙台圏、八戸圏からの移動時間がこれまでよりも大幅に短縮された。
 鉄道と道路はライバルのように言われることが多いが、三陸鉄道では、むしろこれらの道路を活用して、仙台圏、八戸圏、盛岡圏から三陸沿岸を訪れてもらい、三陸鉄道にも乗車して楽しんでもらう企画も行っている。

 昨年度と今年度は、観光庁の補助事業を活用して、バスで三陸まで来てもらい、その後、三陸鉄道に乗っていただき、三陸の海の幸などを楽しんでいただくツアーも実施している。
 また、今年の7月と8月には、ナイトジャングル列車が話題を集めた。
近年、三陸鉄道でもシカが線路に出て列車と衝突するケースが増えてきている。これを逆手に取り、夜に出てくるシカを列車の中からじっくり観察しようと始めたのがこのナイトジャングル列車だ。
 盛岡市の動物公園園長が一緒に乗車し、列車内でシカについての基本的な話を乗客の皆さんにしてもらう。観察ポイントに到着したところで列車を止め、周辺を懐中電灯で照らしておそるおそる観察。すると、ギョロリと光る目のたくさんのシカを発見し、乗客の皆さんもびっくりするやら、興奮するやら!

「三陸鉄道つながる、三陸鉄道つなげる」。

 これは、以前作った三鉄のポスターに掲げたコピーだ。震災等で分断された三陸鉄道は多くの皆さんのご支援でレールが1本につながることができた。今度は、三陸鉄道がつなげる役割を果たし、人と人を、地域と地域を繋げていきたい。
 全国的に地方鉄道を巡る環境がますます厳しくなる中、三陸鉄道は「笑顔をつなぐ、ずっと・・・」という会社のモットーをこれからも大切にしながら、地元の皆さんの足を確保するとともに、全国の皆さんにも乗っていただき、地域の振興や活性化に少しでも貢献しながら、光り輝く三陸の実現を目指して頑張っていくだろう。
 皆さんも、機会があれば、是非三陸に足を運んでいただき、三陸鉄道に乗車いただきたい。

中村 一郎(なかむら いちろう) 岩手県盛岡市副市長

2022年4月から現職。これまで、岩手県沿岸広域振興局長、岩手県政策地域部長、岩手県復興局長、2016年から三陸鉄道株式会社代表取締役社長。
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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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医療現場の負担と感染状況の正確な把握、あちらを立てればこちらが立たず

新型コロナ感染者の「全数把握」をめぐる厚労省と知事会の鍔迫り合いが続いています。
厚労省側の言い分は、全数把握をやめて定点把握に基づく推計にすると把握漏れが起きる、自宅で死んだら誰が責任取れるのか、というもので、知事会側は、保健所や医療機関の逼迫を受け、重症化リスクなどに応じて重点化すべきとしています。
評判の悪い政府の情報共有システム「HER—SYS(ハーシス)」の入力作業を見たことありますが、手書きのFAXを人海戦術でパソコンの画面を入力している様子は、ピタゴラ装置や昔のタイピストを思い起こさせる異常な姿でした。これがデジタル化でDXな日本の現状なのかと。
そもそも、全国で一日何百人感染者が出た、とか大騒ぎしていた時代に作ったシステムを規模が三桁変わっても使い続けることがナンセンスに思われます。

★コロナ「定点把握」厚労省が検討 特定医療機関のみ 全数把握見直し
2022年8月18日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220818/k00/00m/040/388000c

★「全数把握」から新型コロナ除外へ…医療機関の負担軽減、感染状況の把握に課題も
2022年8月18日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220817-OYT1T50319/

★コロナ全数把握 知事会「やめるべき」、専門家「維持」 代替策は?
2022年8月19日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQ8M66RDQ8MUTFL00C.html

★新型コロナ、感染症法上の分類「新たな枠を」 岡部信彦氏に聞く
2022年8月20日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220819/k00/00m/040/121000c

★5類でワクチン有料化も 加藤厚労相「理屈として」
2022年8月19日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20220819-FP4UGQ72IZKFRJDLCKLAXWY7QQ/

★毎朝5時まで…“入力作業”に医療現場は疲弊 新型コロナ“全数把握”の実態
2022年8月19日 テレビ朝日

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000265601.html

★<新型コロナ>感染者の全数把握、見直すとどうなる?「終わるのは深夜」の現場負担は?課題は?
2022年8月13日 東京新聞06時00分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/195450

★患者の全数把握、医療現場を圧迫 政府、簡素化で急場しのぎ
2022年8月5日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220805/k00/00m/040/265000c

★「第7波」で疲弊する保健所「現場レベルの工夫は限界」
2022年8月3日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20220803-4LG3LKFUYVKR3LT6ZITWSHI56M/

★通常医療への移行2段階で 専門家、全数把握見直し提言
2022年8月2日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA024ZQ0S2A800C2000000/

★感染者全数把握、見直し要請 指定市長会・知事会「命守れなくなる」
2022年7月29日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQ7Y6DJXQ7YOXIE008.html

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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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