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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第79号

< 2022/7/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第79号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会 理事長)
2.リレートーク
  遠藤 恵利(金融系シンクタンク・チーフコンサルタント)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭寸言
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              議会が条例をつくる

                       穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 埼玉県議会の一部会派が条例の改正案を9月定例会に提案する準備をしています。内容は昨年2度に渡り、県内ネットカフェの個室で立てこもり事件が続いたため、自民党議員団が「防災のまちづくり推進条例」の改正案を提出するとの事です。外部と遮断された「完全個室」は人気があるものの、安全対策や規制、指導する法令がなく、野放しになっているからです。
 犯罪の防止に配慮した店舗整備の努力義務を、個室のあるネットカフェ、マンガ喫茶を条例に加えるとの内容です。条例本則の改正に加え、県には関連した指針づくりを求めています。  
 ややもすると地方議会は常に執行部から提案された案件だけを審議し、議決を行うことが本旨として、能動的に自らの意志を発揮されていないことが大多数です。議会の様々な意志を住民や執行部に公の方法で伝えることも時には必要です。議会が執行部と協議し、様々な政策が実現したとしても、住民には「執行部の意志」として映り、議会の存在が見えません。
 いたずらに執行部と対峙するのは好ましくありませんが、議会と執行部はそれぞれが意志と権能を持つ異なった機関です。執行部と議会は真正面から向き合い、対峙するところに存在意義があるといっても過言ではありません。これからの議会は従来の受身体制から、議会の意志を十分に発揮する積極的な活動の展開が住民の期待に応えられる道があるかも知れません。
 議会の形骸化が指摘される昨今、新たな道を模索することが必要なのではないでしょうか。
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2.リレートーク
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  「働く女性の支援とキャリア形成のあり方について〜ワーキングママの現場から〜」

               遠藤 恵利(金融系シンクタンク・チーフコンサルタント)

 まず、本稿で女性の働き方やキャリア支援を考える上で、背景データを少々ご紹介させていただきます。
 専業主婦と共働きの世帯数が逆転したと言われて久しいですが、内閣府男女共同参画局のデータを見ると、実は、共働きのうち、女性がフルタイムで働いている世帯は1985年以降で見てもそれほど増えていません。
さらに、帝国データバンクが2021年7月に実施した調査によると、女性管理職の割合は平均8.9%で、政府目標である「女性管理職30%以上」を超えている企業は8.6%でした。同時に、女性活躍を進めていると回答した企業の割合は46.9%となった一方で、約40%の企業では、依然として女性登用は進めていないと回答するという結果でした。

 こうした数字からも、我が国において、女性の仕事と育児の両立は相当困難を極めているだろう実態が浮かび上がってきますが、私個人の経験及び周辺のママ世代の女性達の声を聞いても、日々、両立は相当厳しいものがあると感じております。
 まず、育児中のフルタイム勤務の女性の一日のスケジュールは、保育園送迎の前後を中心として、まさに分刻みの綱渡り状態となっています。何か一つでも予定が狂えば、途端に破綻するという緊張感です。例えば、イヤイヤ期で愚図る子供を、泣き喚かれながらも1時間以内に全ての家事と出掛ける支度を完了させ、保育園に連れていかなければなりません。ここで難航すれば即遅刻となります。また、お迎え前においては、容赦なく16時から入れられる会議、遠慮なく繰り出される雑談、それによる会議の延長、さらにパソコンをたたみ始めるとなぜか声をかけてくる上司など、数々の困難事象により保育園のお迎えに遅刻し、嵩む自腹の延長保育代など、辛い現実にさらされます。ここで、ワーキングママには、「時短に変更しようか」「責任の軽い仕事に配置転換を希望しようか」といった選択肢が浮上し、実際に多くのママはこれを選びます。また、家計に余裕があれば、思い切って退職を選ぶ方もいらっしゃるでしょう。
 当然ながら、時短勤務や配置転換を選べば、昇給も昇格も止まります。それどころか、勤務時間短縮分プラスアルファで給与が大幅カットされ、30代で新卒社員並みの給料に逆戻りという場合も少なくありません。期間としては、子供が小学生になっても、学校生活のケアや、習い事の送迎、人によっては受験勉強の伴走など、親としてやることは満載であり、エリアによっては学童が無いこともあり、女性が子育てから実質的に解放される時期までには、10年以上の歳月を要することが一般的です。この30〜40代の10年は、一般的に職業人生においてメインとなるキャリア形成期であり「子育て中は、ちょっとキャリアはお休みでもいいじゃない」では済まされない致命的な不利となります。
 結果、キャリアを守りたければ子供は産まないか人数を産み控える(そしてますます少子化へ)、もしくは「分かって産んだならキャリアは諦めろ」と言われるという現状になっているわけです。

 そこで、こうした現状を打破するには、どういった施策が有効でしょうか。その答えは「働き方の多様性とそれに応える評価制度」に尽きると考えます。
 何かひとつの「べき論」に縛られることは、即ちそこから漏れる人は働き続けられなくなるということであり、働きやすい環境には、「相手の事情に応じて、柔軟に働き方を選択できること」が重要であると考えます。究極を言えば、期日までに求められた成果を出せるのであれば、いつ、どこで働いても良いという柔軟な働き方を徹底するということではないでしょうか。それは既存の裁量労働制では?という声もありますが、実態としては、たとえ勤務形態が裁量労働であっても、「常識的に9時までには会社に来るべきだ」とか、「在宅勤務が制度上は認められているが、チームの一員として、最低でも週2〜3日は出社して同僚とコミュニケーションをとるべきだ」などと上司が奨励するという風に、蓋を開けてみれば、実はほとんど裁量などないといったことはよくある話です。
 また、期待される評価制度とは、具体的には、管理職であれば、純粋にその時点での本人の管理能力やマネジメント人材としての適性を評価する仕組みが必要であると思われますし、併せて、昇給・昇格の道は管理職登用だけではなく、専門職等の管理職とは別の枠組みで、本人の適性と成果に合わせてきちんと昇給・昇格できる仕組みも必要であると考えます。

 こういった子育て世代の働く女性を政策的に支援するにあたっては、単に女性管理職の比率を上げよというだけでは不十分です。単純に数字上で女性管理職の比率を上げるだけであれば、上述のように、女性がキャリアか子供かの選択を強く迫られる状況は変わらず、少子化は進み、結局、女性の就業率(特にフルタイム)や管理職比率等も上がらないでしょう。真の支援は、育児がキャリアの足枷にならないための多様な働き方と、キャリアアップにおける複数の道の確保を推進することであると考えます。また、育児支援の「手」の選択肢は多いに越したことがなく、福井県や岡山県が行うような、祖父母世代の育児参画を支援する「孫育休」を認める企業へ奨励金を支給するといった取り組み等も有効であると感じました。

 結びに、これらのお話は、何もワーキングママに限ったことではなく、あらゆるディスアドバンテージを負った方への自立・両立支援にもつながる、労働市場の活力向上にかかる取り組みであることを申し添えさせていただきたいと思います。

遠藤 恵利(えんどう えり)

金融系シンクタンク・チーフコンサルタント。社会保障分野のコンサルタントとして、当該分野に10年以上従事。専門は医療政策、ヘルスケア・ライフサイエンス分野を中心として、介護・福祉政策、教育・子育て支援、男女共同参画分野にも携わる。
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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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喫煙者の不遇は続く 〜喫煙所がなくなったらどうやってコミュニケーションを取ればいいのか?〜

改正健康増進法で行政機関の庁舎には喫煙所が設置できなくなりましたが、「議会は行政機関ではない」という力強い説明の結果、喫煙議員にはまだまだ累が及ぶことはない模様です。特に、九州方面では喫煙所へのニーズが根強いようで、各所で議論を呼んでいます。
そもそも謎の「タバコ休憩」に対する非喫煙者の目も厳しくなっていく中、喫煙者はどんどん肩身が狭い思いをしていると思いますが、現在50代くらいの世代が社会人になった頃は、まだ職場のデスクに灰皿が置いてあったり、特に市町村役場では、男性職員はタバコを吸うのが当たり前という風潮があったりしました。タバコが職場から締め出され、「喫煙所」が設けられるようになると、当初は不満もありましたが、世代や役職を超えたコミュニケーションが取れる「喫煙所人脈」が重宝され、中には非喫煙者なのに喫煙所に足繁く通う如才ない者までいたほどでした。
その喫煙所が撤去されると、近所の公園や店舗まで足を伸ばす「遠征組」がたむろするようになり、これはこれで苦情が寄せられたりしていますが、若い世代ほど喫煙者は少ないようなので、いずれ時が解決する問題なのかもしれません。

★長崎市議会 新庁舎フロアに喫煙室 非公開で決定
2022年7月4日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220704/k00/00m/040/174000c

★長崎市役所新庁舎の喫煙室設置「撤回を」 市医師会が要望書提出
2022年7月20日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220720/k00/00m/040/258000c

★長崎市議会喫煙室 「議員にも喫煙者」提案、議事録作成せず
2022年7月21日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220721/k00/00m/040/080000c

★県議会の要望で再設置した喫煙所、職員の利用があり閉会中は閉鎖へ…防災上の観点から
2022年7月7日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220707-OYT1T50121/

★一度は撤去の喫煙所「県庁に再設置を」…県議会の請願採択、「時代に逆行」の声も
2022年3月18日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220318-OYT1T50134/

★副町長、駅で「うっかり」一服 勤務中喫煙禁止の奈良・王寺町
2022年4月14日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20220414/k00/00m/040/051000c

★「学校職員が校外で喫煙」と通報…勤務時間中に喫煙繰り返す、小学教頭ら3人に停職処分
2022年1月13日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220112-OYT1T50045/

★官庁街の公園、たばこモクモク 苦情次々「板挟みだ」
2020年11月28日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASNCW6RMLNCWUNHB00K.html

★それって休憩じゃないの? 勤務中に頻繁に喫煙する社員への対応
2022年6月29日 産業保健新聞

https://news.doctor-trust.co.jp/?p=52043  

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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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