< 2022/1/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第73号 ■■
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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭寸言
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
近納 裕政(株式会社クラセル桜川 執行役員<桜川市市長公室付 課長補佐>)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭寸言
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国と地方の役割分担は実務的見地から
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
地方分権とは異なり、国と地方の役割分担(権限)の明確化を永い間訴え続けてきたが、関係が複雑、難解で行政関係者でさえ、なかなか振り返ってはくれなかった。しかし、新型コロナ対策の反省や地方と密接に関係するデジタル化を推進するため、国は首相の諮問機関である地方制度調査会をスタートさせ、明確化の第一歩を踏み出そうとしている。絶好のチャンスである。
様々なコロナ対策で指摘されたように、国と地方の役割が不明確な為に様々な行政効果が阻害されてきた。保健所のあり方をひとつ取っても、都道府県や政令市が設置していながら、感染症対策では国の中心的な仕事を担っている。極めて解りづらい形である。
コロナ対策だけでなく一般行政においても、国と地方の役割分担(権限)を明確にしないことから、必要以上の国の規制によって地方の自立や自律性を消失させ、地域の活性化に大きな阻害要因となっている。そのうえ、なんと14.5兆円にも及ぶムダな行政経費を費消している。(NPO法人地方自立政策研究所試算 『地方自治 自立へのシナリオ』東洋経済新報社発行)
国と地方の役割の不明確さに起因する権限の錯綜や事業の重複、補助金のムダ使いだが、地方が持つ権限を国に移し、全国のエリアを集中的に行うべき権能の明確化も不可欠である。地方との関係が不可分であるデジタル化も、役割分担(権限)を明確にしなければ成功は不可能であり、都道府県と区・市町村の役割分担も明らかにする必要がある。
地方制度調査会では2年後に答申をまとめるとのことだが、是非お願いしたいことがある。理念で国と地方の役割分担を明確にするのではなく、現在実施している国と地方の事務・事業の一つ一つを取り上げ、実務的な見地から役割分担(権限)を明確にする作業である。
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2.リレートーク
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「農・ヤマザクラと共に自活し、繋がる暮らしづくり」
近納 裕政(株式会社クラセル桜川 執行役員<桜川市市長公室付 課長補佐>)
私が住む茨城県桜川市は、日本百名山の一つである筑波山の北側に位置し、一級河川桜川周辺の肥沃な大地を活かした農業、八溝山地の山々から産出される良質な花崗岩(御影石)を活用した石材業など、山の恵みを活かして発展してきた地域です。
しかし、担い手の高齢化や若者の農業離れによる後継者不足、安価な外国産石材の台頭や生活様式の変化による石材需要の減少による石材業の衰退により地域の稼ぐ力が急速に失われています。
このような状況の中、当市では、地域固有の資源であるヤマザクラをまちづくりのシンボルに掲げ、まちづくりに取り組んでいます。
(あまり知られていないのですが笑)当市は、「西の吉野 東の桜川」と称される日本有数のヤマザクラの里であり、紀貫之に詠まれ、世阿弥の謡曲「桜川」の舞台となり、江戸時代には隅田川や玉川上水をはじめとする江戸の花見の名所づくりに当地から桜が移植された歴史を有しており、現在も、市内に約55万本のヤマザクラが自生し、櫻川磯部稲村神社の参道及びその周辺は国の名勝地であり、名勝指定地内の全ての桜が国の天然記念物に指定されています。
ご存知の方が多いかもしれませんが、現在のお花見に代表されるソメイヨシノは人工的に作られた園芸品種(クローン)であるため、同一条件下で同時期に開花し桜前線が成立します。一方、野生種・自然交雑種であるヤマザクラは、一つとして同じ個体が無いため、色も、形も、開花時期も少しずつ異なることから、当市では3月下旬から4月下旬までお花見を楽しむことができます。
私たちは、この身近な裏山にある一本一本が個性を持つヤマザクラをまちづくりのシンボルとすることで、子どもたちに個性や特技を伸ばすことが社会に彩を添えることを伝えたいと考えています。そして、地元に誇れる資源があることを知ることで郷土愛を育み、将来は桜川に戻りたい、戻れなくても関わり続けたいという意識を醸成したいと考えています。
また、ヤマザクラを通じて裏山に目を向けることで、自分たちが里山の恵によって暮らしてきたことを再認識し、山との関係性を紡ぎなおすことが桜川市らしい暮らしづくりになる。つまり、ヤマザクラが自生する山を再生するということは、単にヤマザクラを守るということではなく、水資源を再生し、農業を活性化させ、農村景観の維持に繋がり、さらに、それ自体がヤマザクラの里に暮らすという価値をも作り出すということです。
昨年、桜川市のらしさや魅力と合致したしごとをつくり、桜川市民を笑顔に導くことを目的とし、桜川市地域商社「株式会社クラセル桜川」を設立しました。クラセル桜川という社名には「暮らし続けられる、暮らせる桜川市を実現する」という想いを込めています。併せて、桜川市地域振興拠点施設実証店舗「加波山市場」を4月にオープンしましたが、前述した想いから店名に市内で山頂が一番高い加波山を取り入れています。
少子化や高齢化を課題だと言う人もいますが、私はそうは思いません。少子化や高齢化といった現象がもたらす課題の真因を突き止め、地域地域の特色を活かし、暮らしにあった解決策を考えていくことが大切だと思っています。
国と都道府県と市町村が対等協力な関係になってから20年以上経過しました。基礎自治体が輝くことが日本を元気にする。基礎自治体にも多様性が必要では無いでしょうか。
近納 裕政(こんのう ひろまさ)
株式会社クラセル桜川 執行役員(桜川市市長公室付 課長補佐)
2000年、岩瀬町に奉職。2005年、市町村合併により桜川市職員。2020年度、桜川市地域商社「株式会社クラセル桜川」の設立と桜川市地域振興拠点施設実証店舗「加波山市場」の開設を担当。2021年4月から同社に派遣され現職。プライベートでは「森コミいち」、「加波山登山競争」など桜川市の地域資源を活かしたイベントの企画運営に取り組む他、他の自治体の住民協議会や事業仕分けにも関わる。モットーは「地域が変われば日本が変わる」
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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東京23区で「転出超過」 「テレワーク移住」への期待は結実するのか?
いよいよ東京23区からの人口流出が数字に現れてきました。
コロナ拡大以来、「テレワークが定着すれば地価の高い東京近郊に住まなくてもよくなるなるので地方移住が進むはず」、「いや、テレワークは生産性が下がるから日本人には合わない」、「生活利便性や子供の進学を考えたら東京から離れられない」など様々な意見がありました。
実際のところ、東京に住んでいた人が全国に散らばっていくということは短期間には起きておらず、転出先は神奈川、埼玉、千葉などの東京近郊ががボリュームとしてはやはり多く、大阪、愛知、福岡といった各地方の中心部への移住がそれに続いています。いくらリモートが進んでも、オフィス自体は東京に残っているところが多いので、一足飛びに全国に波及するということはないでしょう。
しかし、今後を予測すると、「流出」と「流入」のそれぞれに大きな変化が出るものと思われます。
まず「流出」の部分では、オフィスの契約更新や企業の新陳代謝の中で、都心のオフィスが近郊や地方都市に移っていくと思われますし、それにつられて従業員も流出していくものと思われます。もちろん、子供の進学先など家族の生活に伴う「慣性力」があるので10年単位の時間はかかると思いますが、特にマイホームを買おうというときには東京の高い物件を避けて周辺部に向かい流れは大きくなるでしょう。
一方の「流入」の部分では、これまで地方の進学校に通う秀才は高校を卒業したら東京の大学に進学しそのまま東京の大企業に就職する、という「上京」ストーリーが一つの定番ライフコースになっていました。「東京に行って一旗揚げる」という「木綿のハンカチーフ」や「心の旅」の世界は昭和から現代まで綿々と受け継がれていたわけです。しかしながら、コロナ拡大に対する緊急避難としてオンライン授業が導入されると、「365日×4年間、高い家賃払って東京に住む必要はないんじゃないか」と馬鹿らしくなった人も少なくないでしょう。海外ではミネルバ大学のようなオンラインの難関大学もあります。現実的にはオフラインとオンラインをミックスして、週に1〜2日の通学日の設定や年数回のスクーリング的なオフライン集中講義、1〜2年間だけ集中的に通学するなどの多様な形態になっていくものと思われます。そうなった場合には、生活の拠点は実家に置いたまま、都市部の大学で学ぶという学生生活を送る学生が増えてくるのではないでしょうか。
その結果、学生を採用する企業の側でも、給与水準が高く福利厚生も高コストな「東京本社一括採用」ではなく、地元に生活拠点を置いたままの「地方採用」が増えてくる可能性があります。
もちろん、社会全体がこのように一気に変わることはなく、また、「若いうちは憧れの東京で働きたい」という若者は多いと思いますが、地方の優秀な学生が進むライフコースに選択の幅が広がるのではないでしょうか。
★東京23区、昨年は初の「転出超過」…テレワーク増加が影響か
2022年1月28日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220128-OYT1T50063/
★東京一極集中が鈍化 「転入超過」が最少に 21年人口移動報告
2022年1月28日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220128/k00/00m/040/278000c
★“東京一極集中”に変化の兆し 人口移動データで読み解く 移住の現場は…
2022年1月28日 NHK
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/76267.html
★人口移動報告 家賃高い、首都圏脱出 「コロナ禍、仕事フルリモート」
2022年1月29日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220129/ddm/012/040/128000c
★手厚い支援、テレワーク設備… 地方「若者呼び込む好機」
2022年1月28日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220128/k00/00m/040/441000c
★全国どこでも居住OK ヤフー従業員、離島でも勤務できるように
2022年1月12日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASQ1D5SNKQ1DULFA00B.html
★テレワーク、通勤負担は軽くなるが… 「出社とうまく交ぜて」の声も
2021年12月29日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASPDW726BPD6PLFA002.html
★茨城、群馬が転入超過に転換 栃木は転出超過数が縮小
2022年1月28日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC2876T0Y2A120C2000000/
★千葉郊外、企業誘致・移住に知恵絞る コロナ後で正念場
2021年11月16日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC100MA0Q1A111C2000000/
★別荘地で地価上昇 背景に投資継続と「二地域居住」
2021年9月21日 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20210921-TFITAGHWGZJG7A6WH6G6CWPW24/
★テレワーク、全面か混合か 「かじ切った」「接することで生まれる」
2022年1月13日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASQ1C44KJQ16ULFA01N.html
★テレワーク実施率18・5%、コロナ禍で最低…首都圏は10・1ポイント低下
2022年1月27日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220127-OYT1T50188/
★「出社の方が」減るテレワーク もともとの課題浮き彫り
2021年7月31日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASP7Z5QQPP6XULFA01Y.html
★夢の学生生活は画面の中 コロナ世代の新しい結束
2022年1月4日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF090RH0Z01C21A2000000/
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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
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