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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第68号

< 2021/8/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第68号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  水田 圭(秋田公立美術大学准教授)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭寸言
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義務教育の主役は市町村〜コロナ対策と自治体の自己責任〜

                         穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 コロナ感染が急増し、若年層に拡大している。特に夏休み明けの小・中学校の授業をどう展開していくのか、各自治体の力が問われている。一部には文科省が大号令をかけるべきだとの指摘があるが論外である。義務教育の実施主体は市町村であるからだ。
 夏休みの延長やリモート授業の導入など様々な工夫をしているが、中には市長部局と教育委員会の意志が乖離しているところも見受けられる。教育委員会は首長から独立しているといわれているが実態は異なっていて、教育委員(教育長を含む)の選任は議会の議決が必要とは言え、市長の指名と言える。建前と実態の乖離がコロナ対応によって浮きぼりになった。
 制度の矛盾があるとは言え、コロナによる義務教育のピンチをどう切り抜けていくのかが喫緊の課題である。リモート方式の導入には様々な準備が必要で、多額の教育投資の他、教師の再教育が必要である。この際、教育委員会と市町村部局が連携し、地域の実情に合致した思い切った対応策が求められる。
 単に夏休みの延長はその場しのぎとも言える。地域によっては休校の処置も必要かもしれない。これには様々な批判が出るかも知れないが、保護者や地域にコロナの拡大について警鐘を鳴らす効果もある。コロナ対策を万全にした上で普通授業をすることも対応策のひとつだが、万一、学校内にクラスターが発生した場合には批判を真正面から受けることを覚悟しなければならない。未曾有の出来事ではあるが義務教育の実施主体として、今こそ自己決定と自己責任を再認識し、義務教育における地方の熱意と力を十分に発揮することが自治体の責務である。

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2.リレートーク
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新型コロナ禍における対策アプリケーションの開発から学ぶこと

                         水田 圭(秋田公立美術大学准教授)

 皆様はじめまして。私は秋田公立美術大学でコミュニケーションデザインの教員を勤めています。並行して、昨年来の新型コロナ禍を受け感染回避行動と経済活動を両立し人々が集まるためのスマートフォン向けアプリケーションを構想し開発しています。

 このアプリケーションのアイデアは、社会現象への二つの観察が元となっています。
まず、実際の感染リスクと人々の感染回避行動が乖離していることです。高リスクにも関わらず感染を回避しない行動は、人々の命を危険に晒します。一方でリスクの低い地域での過剰な感染回避行動は経済へのダメージを深刻にする側面があります。人々はそれぞれが持つ危険のイメージにより行動しています。全国で同じメディアに触れていれば行動が似通うのは当然です。この乖離を近づける事ができれば、感染状況に合わせた行動や対応を可能にし、感染回避行動を促進しながら経済活動と両立できるだろうと考えました。

 次に、先行する接触確認アプリCOCOAが社会実装する過程の観察です。公共意識が強いといわれる日本においても、人々が利用したくなるインセンティブが欠けていたと言わざるを得ません。本来の目的は社会の感染拡大防止です。アプリの実現は評価されるべきです。一方で今後このままで「社会で機能する」見込みは薄いと私は思うのですが、改善しないままに見えることは残念です。機能や成果の「検証」と「改善」が行われていないことは批判されるべきかも知れません。しかし、私達が所属する日本型組織のほとんどが同じ問題を抱えているのではないでしょうか。アップル社とグーグル社によりBluetooth機能を用いた接触確認アプリは一国に一つに限るというルールがあります。そのためもありCOCOAが改善することに様々な意味で期待しています。

 少し話が逸れてしまいました。開発しているアプリケーションでは、人々の「集まりたい」という気持ちをインセンティブとして利用し感染回避行動へ繋げようとします。また、Bluetooth機能を使えないという開発条件が(ここで詳しく書けませんが)アプリが普及しなくても機能するアイデアに繋がりました。COCOAが機能しない原因として普及率や陽性登録率が低いことがありますが、不利な条件をクリアしようとすることで前提条件を超える発想が出せたと考えています。
もちろん私が行っている開発の社会実装プロセスにも、想像しなかった課題があります。例えば人々のプライバシーやセキュリティへの意識も「本当のリスク」と「リスクのイメージ」は乖離しており、開発者は実際のリスク低減に取り組むとともに、人々の「リスクのイメージ」に対応する必要があります。

 この様にアイデアの発想や提案のみではなく社会実装を目指すことで(実際はほとんど研究室に閉じ籠り遠隔で内外と連絡する日々ですが)研究室に閉じ籠っていては経験出来ない多様な学びがあります。

 新型コロナウイルスによる諸問題は変異株の出現を受け長期化し、開発するアプリへの期待が大きくなるかも知れません。比較的安全な地域に限らず全国に向けた成果を目指しています。開発には地域社会からの支援は欠かせません。これまで秋田県からFS事業や産学連携チャレンジ促進事業に採択して頂き、地域内外の企業や団体からもご支援を受けています。しかしながら社会実装にはまだ至っておりません。一日も早い社会実装を果たし、これを読んでいる皆様に貢献できましたら幸いです。

水田 圭(みずた けい)

秋田公立美術大学准教授、ディレクター/デザイナー。
東京芸術大学デザイン科卒。フランス政府国費留学、東京芸術大学大学院修士課程修了。文化庁若手芸術家海外派遣/仏ENSAD招待教授。デザイナー/ディレクター、大学非常勤講師などを経て現職。
メディアの変化に合わせたデザインを模索。地域のデザイン調査。兼業届を提出しデザイン業を継続。コロナ禍を受け、コミュニケーションデザインの視点からスマホアプリを提案、社会実装を目指している。

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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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デルタ株蔓延で一気に“自分ごと”になった新型コロナ 現役世代へのワクチンの普及が急がれる

ゲームチェンジャーとしてワクチン普及に高い期待が寄せられていたところですが、ゲームをひっくり返してきたのは変異種の方でした。
夏休みに我慢して人の動きを抑えられれば、との望みも虚しく、新型コロナウイルスはこの夏、デルタ株にガラリと入れ替わり、それによって、新型コロナと社会との闘いは新たなフェーズに入ったと言えます。
まず人間側の作戦としては、重症化しやすい高齢者のワクチン接種を進めることで、高齢者施設や医療機関でのクラスター発生を抑え込み、医療資源への負担を軽くしつつ、段階的な若い世代までのワクチン普及を目論んでいました。しかし、感染力が桁違いに強いデルタ株への置き換わりが進んだことで、この目論見は崩れてしました。まず、感染者数自体が格段に増加することで、高齢者よりは重症化しにくいはずの現役世代、特に中高年の中等症、重症患者が激増し、確保していたベッドを埋め尽くしてしまったのです。“コロナは年寄りが死ぬ病気”だと高をくくっていた現役世代にも、これで一気に身近な病になりました。さらに、これまでには稀であった10代の患者が激増し、学校の部活や塾でのクラスターが発生するようになりました。デルタ株によって、ゲームは見事にひっくり返されたのです。
こうなってくると恐慌をきたすのが、学校に通う子を持つ親御さんです。それまでは家庭内感染と言えば、親が職場などから持ち込んで子供に伝染るというのが一般的だと思われてきましたが、どうやら今度の新型は子供の間で流行るらしい、子供から親に伝染されても入院できないぞ、搬送先が見つからずに自宅で急変して亡くなる若い人もたくさんいるぞ、こりゃ大変だ……ということで、新学期なんてとんでもない、夏休みの延長を、という声が広がっています。
昨年の第1波のときには、都内で働くお父さんが“病原菌”扱いされて、帰宅しても家族に顔を合わせてもらえず別室にこもる、場合によってはホテル暮らしという話もありましたが、新学期が始まると、学校から帰ると子供部屋に直行、食事も個室でめいめいに、という家庭も出てくるかもしれません。

★デルタ株“これまでの治療法が通用しない”〜密着・重症者病棟
2021年8月23日 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210823/k10013213611000.html

★10代感染者急増で新学期へ 「至るところでクラスター発生するのでは」親、先生も不安
2021年8月21日 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/125756?rct=national

★学校、夏休み明け厳戒 デルタ型拡大で遠隔学習整備急ぐ
2021年8月21日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE185M20Y1A810C2000000/

★「学校での対策徹底を」 厚労省専門家組織が注意喚起
2021年8月25日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25AYR0V20C21A8000000/

★子から親への感染拡大に懸念 経路に変化、休校相次ぐ
2021年8月27日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE255US0V20C21A8000000/

★コロナ「第5波」、子ども感染急増 別のウイルスも流行
2021年8月16日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0515J0V00C21A8000000/

★「防ぎようない」保育園で相次ぐクラスター 休園1カ月で4倍に
2021年8月24日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20210824/k00/00m/040/315000c

★新型コロナ感染拡大で保育園の人繰り限界 ワクチン副反応・家族の濃厚接触…保育士不足に拍車
2021年8月23日 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/126150?rct=national

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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
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