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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第62号

< 2021/2/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第62号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  田中 淳一(一般社団法人ローカルソリューションズ代表理事)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
  日本自治創造学会 第13回研究大会開催日決定
  
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1.巻頭寸言
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「直言」

 穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 25年以上前になるが、「公立病院は非効率で税金のムダ使いの温床」としてマスコミが取り上げ、国会も地方議会もこぞって公立病院の赤字体質を厳しく追及した。公的病院の民営化や統合、改廃も行われ、私も県立病院の赤字を縮小するため、様々な改善提案を行った一人である。公立病院を所管する当時の厚生省や都道府県知事は公的病院の縮減や徹底したムダの排除にメスを入れなければ世間の目から激しく糾弾されたのである。
 しかし、現在のコロナ禍では、激しく批判された公立病院が感染患者と向き合い、中心的な役割を担うと共に精一杯の努力をしている。私も反省しているが当時は誰一人、我が国の医療体系のあり方について目を向けなかった。振り返ると、我が国は全てに、長期的な展望を考える思考をどこかに置き忘れてきてしまった。
 政治や行政は短期的に処理する課題と長期的な展望が求められる。有権者は長期的な課題よりもマスコミの問題視する今日的課題に目が向くことが多い。
 コロナの襲来を契機に我が国も、感染対策はもとより短期・長期の課題をしっかり取り上げる大人の政治感覚が必要ではないだろうか。財政の悪化など誰も見向きもしないが、中長期的に議論をし、コロナ後の課題としてマスコミも議会・国民も真剣に考えなければいけないのではないだろうか。

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2.リレートーク
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「ジェンダー平等を前提とした地方創生へのシフト」

 田中 淳一(一般社団法人ローカルソリューションズ代表理事)

 ジェンダー平等とは男女共同参画や女性活躍と何が違うのか。よく尋ねられる問いだ。この問いには、男女共同参画や女性活躍とは現在の慣習・仕組みの中で女性の参画や活躍を促すもので、ジェンダー平等とは現在の慣習・仕組みそのものを進化させていくものであると答えている。

 私は、2015年から2020年までの5年間、レタス生産日本一で有名な長野県川上村に携わっていた。川上村は平均年収が4,000万円とも言われ、豊かな農業を営む村であり、地方創生のセオリーで言えば収入が高いのだから人口も増えていてもおかしくないはずであるが、実態として人口は減少していた。農業は原則として長男が跡継ぎとなるため、女性は村外に出て帰って来ないことが多い。したがって村の女性のほとんどは村外出身で、「農家の嫁」として跡継ぎを産むことが最も大きな役割として期待され、ヨソ者のレッテルを貼られながら、子供を産むまでは家の外を歩くことも遠慮しなくてはならないといった文化が、この50年以上続いていた。文化が硬直化し、ヒエラルキーが完全に固定化していたのだ。

 私が川上村に関わり始めた理由は、村の男性たちの「嫁探し」を手伝って欲しいという依頼があったからだ。「嫁」という表現で女性蔑視的な文化を察知したため、まずは村で暮らす女性たちに話を聞くことにした。村の女性たちが次第に腹を割って話をしてくれると、「好きなファッションやメイクもできない」「文化は大正時代のようだ」「結婚して来てみたら騙された気分だ」という声が山のように出てきたので、役場の職員に「この村で暮らす女性の暮らしやすさを向上しなければ、村の男性と結婚する人はいませんよ」と伝えた。

 川上村では、ヒアリングの他にも様々なアンケート調査も実施をした。そのアンケートの中で興味深かった結果として、女性が自己実現を認識している家庭の子供の数は、そうでない家庭に比べると、ちょうど1.0人ほど多かったという結果だ。きっと女性が自己実現を認識している家庭では、子供にも村で自己実現が出来るイメージを継承し、将来の帰村にも繋がる可能性が高いと思われる。

 ジェンダー平等とは、誰もが「やりたいときに、やりたいことを、やりたいように、やれる」といった自己実現を認識できる「寛容な社会」の礎であり、生物学的性別に付与された社会的役割・機会等の格差を解消しなければ、女性の転出超過を抑止して人口減少トレンドを逆転することは不可能なのである。

 ジェンダー平等を前提とした地方創生へのシフトこそが、地域の未来を決定づけるはずだ。

田中 淳一:一般社団法人ローカルソリューションズ代表理事

18歳で起業、1999年にAIベンチャーとして法人化し、その後、ITコンサルティング事業と広告事業の企業グループを、約10年間に渡り経営。現在は、内閣府地域活性化伝道師・総務省地域力創造アドバイザー・総務省地域情報化アドバイザー・内閣官房シェアリングエコノミー伝道師として、地方創生に関連した社会環境政策(主に女性活躍・移住定住・少子化対策・起業支援・ICT利活用等の領域)のコンサルティングや、若い経営者によるスタートアップへの経営コンサルティング等を行っている。

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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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 緊急事態再宣言、3月7日までで解除できるのか?

 1月8日からの緊急事態宣言は、2月7日までの予定が延長され3月7日までとなっています。
 都内の新規感染者数も1月上旬のピークからは大きく減少したものの、2月中旬からは「下げ止まり」傾向が指摘され、リバウンドへの懸念も報じられています。
 死亡者数はまだ高い水準にあり、高い病床使用率など医療提供体制の逼迫も依然として続いています。
 こうした状況の中、感染状況が今後も順調に改善し緊急事態宣言の解除ができるのか、それとも状況が再び悪化してしまうのか、ここが正念場です。

★感染者減少が鈍化、宣言解除できるのか 目指すべき「基準」とは
2021年2月19日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20210219/k00/00m/040/120000c

★宣言解除「雰囲気変わった」前週から感染増で現場は
2021年2月19日 TBS

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000207700.html

★コロナ宿泊施設、利用3割どまり 自宅療養増に拍車 緊急事態再宣言の11都府県
2021年2月18日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF124K50S1A210C2000000/

★【独自】「緊急事態」週内解除は見送りへ…病床使用率の改善不十分
2021年2月17日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210217-OYT1T50031/

★首都圏のイベントや祭り、「2年連続」中止広がる
2021年2月15日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB150JH0V10C21A2000000/

★首都圏の飲食店、宣言で客7割減 ランチ、昼飲みは拡大
2021年2月13日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASP2D75YJP28UUPI001.html

★まん延防止へ重点措置、改正特措法施行…「緊急事態」10都府県で継続
2021年2月12日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210212-OYT1T50226/

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4.イベント情報
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第13回 2021年度日本自治創造学会研究大会 最新情報

開催日決定:5月20日(木)・21日(金)の2日間

場  所:帝京平成大学 冲永記念ホール
    (東京都豊島区池袋2−51−4)

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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
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