地方から未来を真剣に考える。

メールニュース

メールニュース一覧

--

【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第54号

< 2020/6/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第54号 ■■

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  西出 順郎(明治大学公共政策大学院教授/日本自治創造学会幹事)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報

******************************************************************

1.巻頭寸言

******************************************************************
「戦時と平時における公的スタッフ(官僚・公務員)の使い方」

  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 コロナ対策で安倍首相がいくつかの失敗をしました。アベノマスクやPCR検査拡大の遅れ、アドバルーンだけに終わった新薬承認、30万円給付の撤回や10万円給付の遅れなど大きな批判を浴び、官邸官僚の失敗などと揶揄されています。共通しているのは「実現する道筋」を積み上げないまま、方針だけを明らかにしてしまったことに尽きます。
 平時における官僚・公務員の発想や解決する能力には定評がありますが、戦時においては前例がありません。公務員は前例を中心とした思考によって課題の設定や解決方法を訓練されているからです。
 平時と異なり前例のない戦時には、市民的現場目線と感覚、市民的処理能力の活用が不可欠です。
 リーダーはコロナ対策時だけでなく災害時対応や災害後などの再生については、公的スタッフに対して課題の設定や解決方法について具体的な指針を示すことが不可欠です。

******************************************************************

2.リレートーク

******************************************************************
「検証」と行政、政治、そして我々

 西出 順郎(明治大学公共政策大学院教授/日本自治創造学会幹事)

 つい最近、拙著を上梓することができた。『政策はなぜ検証できないのか』という、いささか仰々しいタイトルを付している。所詮、研究書の類のものなので決して尖がった派手さはないが、「行政」という世界の中でいかに政策の評価結果が歪んでゆくのかを実証的に説明したものである。奇しくも周囲からは「タイムリー」といわれる。近年、改ざん、忖度、隠ぺいといった、行政不信をもたらす疑念が次々と湧出したがゆえに、東京高検検事長の辞職やコロナ禍対応にかかる取組への批判が「政策検証」という題材に焦点を当てるようになったのであろう。

 賭けマージャンにしてもいわゆる「前田ハウス」での宴会にしても、一般人からみれば、社会的に地位ある人間の振る舞いとは思えない。そのような人々こそ、李下では冠を正さなければならないし、正せる人にこそ社会を牽引してほしいと我々は願っている。
 過去においても、行政不信をもたらす事象は露見され、社会から厳しい批判が浴びせられた。例えば旧大蔵省のナントカしゃぶしゃぶ事件(1998年)であり、多くの地方自治体で発覚したカラ出張問題(1996年)である。その直後、NPM(ニューパブリックマネジメント)といった行政改革ムーブメントが行政内を席巻した。評価という検証ツールは、信頼回復の伝家の宝刀として組織内に実装されていったことを記憶している。

 しかし悲しいかな、一度日の目に晒され、二度と繰り返すまいとされた光景が未視感的に再現されてしまった。本当のところはわからないが、筆者はその理由をこう見立てている。行政内の公式規範は社会的なそれ以上に厳しい、はずである。しかしながら行政内の非公式な規範は、自らが持つ政策的・政治的情報の優位性を盾に、実は社会的規範を斜に構えてとらえている。ニュースをみながらその背後にあるみえない事実を自らのみが知る優越性が、社会と乖離した裏表を非公式に是認しているのである。多分、賭けマージャンも前田ハウスにかかる一連の動きも、顕在化されるまで行政内では暗黙裡にかつ長きにわたって受容されていたのであろう。その惰性が非常事態下においても無意識のうちに働き、非常事態下であったがゆえにその不条理的な惰性の軌跡が可視化されてしまったのである。「過去の経験に過信し、眼鏡を曇らせたままカップにお湯を注ぎ、こぼして火傷する・・・」、といった感じだろうか。うがった見方をすれば、このウラに反省という概念は存在し得ないかもしれない。

 「李下冠を正さず」、行政には、今一度自らの襟を正してほしい。が、行政にも自らの論理と正義がある。やみくもに自浄作用を求めても詮無い話かもしれない。少なくとも外在的な独立変数が必要だ。政治である。もちろん、逆に政治が現状を許す、もしくは問題を助長する、さらにはより悪しき方向に導く危険性もある。政治は生き馬の目を抜く世界であり、絵空事などケレラセラ・・・かもしれない。しかし、行政を社会のために機能させるのは政治の義務である。

 かつて我が国は「経済一流、政治三流」といわれた。今や「三流どころか・・・」という話も側聞する。またコロナ禍は社会変革を3年早めたといわれる。行政のみならず政治には、社会と自らの間の乖離や歪みを日々チューンナップすべく、自らの営為の「検証」に真摯に取り組んでもらいたい、また、変革のスピードに丁寧に即応してもらいたい。そして我々市民もあらためてしっかりと政治・行政に向き合い、常に「検証」を問い続けなければならない、と思っている。

著書:『政策はなぜ検証できないのか』(勁草書房、2020.6)
 http://www.keisoshobo.co.jp/book/b510466.html 

西出 順郎(にしで じゅんろう)
福井県庁に入庁後、シラキュース大学マクスウェル行政大学院行政学修士課程(M.P.A.)・経済学修士課程(M.A.-Econ)をともに修了。福井県庁退職の後、琉球大学助教授、岩手県立大学教授などを務める。2018年より明治大学公共政策大学院教授。この間、早稲田大学大学院公共経営研究科博士後期課程を修了、博士(公共経営)を取得。専門は行政学、政策評価。著書に『震災後の自治体ガバナンス』(東洋経済新報社、2015、共著)、『公共部門の評価と管理』(晃洋書房、2010、共著)など。

******************************************************************

3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。

******************************************************************
今年の夏は全国で泳げないビーチが多発するのか?

 新型コロナウイルス感染症の影響で、全国の「海水浴場」が開設できない事態に陥っています。
 海水浴場は毎年夏に市町村等が開設していますが、今年は十分な感染症対策が取れないということで開設を見送る動きが拡大しているのです。
 現実的な理由としては、大学の夏休みが短縮されるためにライフセーバーを確保できないという理由があるようです。水泳部の皆さんにとっても夏場の稼ぎの当てが外れてしまったのではないでしょうか。
 「海水浴場」が開設されなかったとしても、そこにビーチはあるわけですから、ライフセーバーが配置されていない海岸でバーベキューして飲酒した挙句に泳ぎ始める人も予想されます。海岸を管理する都道府県としてはこのような「無法地帯化」は避けなければいけないので、看板の設置や警備員やドローンによるパトロールも検討されているようですが、はたしてどうなることやら。

★「3密」リスクで海水浴場開設されず 安全課題に
2020年6月24日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60718950U0A620C2CE0000/

★神奈川県、休止の海水浴場を巡回 水難事故を懸念
2020年6月10日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60204080Q0A610C2L82000/

★コロナ対策で「海水浴場」のない夏 監視員不在で海が無法地帯化?
2020年6月14日 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/35422?rct=national

★ドローンで海水浴場を監視 水難事故救助や遊泳控える呼び掛けも
2020年6月17日 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/36092?rct=national

★海水浴場、3割が今夏に開設せず コロナ感染防止、事故に懸念
2020年6月17日 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/36156?rct=national

★湘南のビーチに都民の笑顔 移動自粛解除、初の週末
2020/6/20 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60602160Q0A620C2MM0000/

******************************************************************

4.イベント情報

******************************************************************

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

--