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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第50号

< 2020/2/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第50号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  西田 陽光
  (一般社団法人次世代社会研究機構代表理事/日本自治創造学会幹事)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
  日本自治創造学会 第12回研究大会開催日決定

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1.巻頭寸言

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「基礎的自治体とコロナウイルス対策」

  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 コロナウイルスの拡大が危惧されているが基礎的自治体は単なる傍観者であってはならない。地域で可能な様々な対策を講じる責任がある。
 防疫に対する住民へのきめ細かい衆知やウイルスが拡大した場合における地域集会の延期、自粛も必要である。地域住民が感染を危惧した場合の処置についても確かな情報を発信しなければならない。
 地方議会も、対策立案についてはもとより国や都道府県に対して、地域の立場に立った決議の採択など積極的な関与が求められる。

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2.リレートーク

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「危機の時代こそ『温故知新』」

 西田 陽光
 (一般社団法人次世代社会研究機構代表理事/日本自治創造学会幹事)

 2020年という新しい年を迎え、オリンピック・パラリンピックの開催に期待と緊張で身が引き締まる思いでありました。ところが2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が、3月2日から春休みまでの間、全国の小中学校と高等学校、特別支援学校に休校を要請すると表明しました。我が国は近年、台風などで甚大な被害に襲われましたが、今度はインバウンド時代の中で感染症が拡大しつつあります。

 少子高齢化の日本の経済環境は、2020・2021年に景気循環上の悪化局面が生じるリスクには注視が必要といわれていますが、ある経済アナリストは以下のような内容で分析をしています。

 1.五輪後の経済をどうみるか、2.人手不足をどう補うか、3.生産性をどう改善するか、という3点です。
1については、労働力の確保と、生産性改善の双方の取組みが不可欠。2については、若者・女性・高齢者に偏在する未活用労働力取込みに加え、追加的な労働参加促進が必要。保育所整備だけでは限界あり。五輪を契機にテレワークを促進し、就労拡大の基盤整備が必要。3については、労働の質と生産性は正の相関。ミスマッチ解消も含め、質の改善に向けた教育投資の拡大をする。AI・IoT利活用や補完投資で、ICT生産業種だけでなく、ICT利用業種の生産性改善を促す取組みが必要等としていました。

「言うは易く行うは難し」、働く人々を将棋やチェスの駒のように配列作戦を考えていても成功したためしはありません。

 中央政府や大企業人材はご存じなのでしょうか? バブル時代を支え、自動車産業を支えた外国人労働者の惨状を(肉体労働できなくなり今どうなっているか)。日本の貧困家庭(単身親家庭では貧困率50%)7人に一人の割合という現状を。経済格差による教育の格差は連鎖拡大し、全国の児童相談所で2018年度中に対応した児童虐待相談件数(速報値)が15万9,850件と、過去最多を更新(厚生労働省2019年8月1日)。このように多くの根深い課題を抱えた日本の地域社会や現場の人々の悲鳴に近い声なき声に、心身向き合わずして未来はないのではないでしょうか。

 新しきを構想するにあたり「温故知新」、日本の地域の先人たちのリアルな姿をご紹介いたします。

 江戸前期元禄時代は、戦国から戦が消え、平和な時代を迎え都市化も進み、人口も増え、人々の暮らしを支える生活物資の木材、米等の需要が拡大し、経済発展の中、性急な耕地面積拡大を目指しました。そして干拓、開墾による新田開発や森林の乱伐、乱開発は自然破壊を促進させました。そこへ宝永の地震と巨大津波が襲いかかり、富士山噴火という甚大な被害に見舞われました。人も農地も自然も経済も多大な損失で大打撃を受けました。経済重点の乱開発に対する災害の反省から耕地拡大のスピードが落とされましたが、経済低迷な時代を迎えます。

 当時、村役人・篤農家として活躍した鹿野小四郎は、加賀国江沼郡吉崎村(加賀市)の貧農の生まれながら才覚で大聖寺藩より、庄屋に抜擢された人物でした。晩年、子孫に向けた農書(農業指導書)「農事遺書」全五巻を著しました。それは、日々の農作業の創意工夫の努力の連続から、農業の生産性を上げてきた実践実学書でありました。各地の農民は多くの農書を熟読しながら、自らも農法・農具の改良を重ね創意と努力の末、17世紀の段階では一反あたり一石の米の収穫高を、18世紀以降は最大で二石にまで増加させました。農民たちは農書を読み学ぶ必然から、積極的に読み書きを学び、また実践と工夫も重ねました。また「講」による地域のつながりは相互扶助や自治力を高め、村役人を決める選挙や訴訟ごとの複雑な書類作成まで行いました。生産力向上と人々の暮らしの質を充実させ、自治力の向上を構築することとなりました。限られた耕作地でより多くの生産を生み出すための精密な農業には、「知的」で「勤勉」で頭がよく、「リアル対応力」の体力・気力・創意力がないとできませんでした。

 当時の江戸社会は、山積みの課題の中でありながら活路を見出す「量的拡大から質的な充実へ」と、大きな価値観の変換を成し得て、幕末まで続く江戸社会の基盤を支えた農村社会の原型が構築された時代でした。
歴史の実在の人々は「日々、良く考え創意工夫の新しい試みの積み重ねが新しい時代を創り出す」と伝えています。

西田陽光:一般社団法人次世代社会研究機構代表理事/智門塾主宰/一般財団法人日本自治創造学会幹事・研究大会企画委員長/日本教育応援団発起人。日本初の「男性のワークライフバランス」「男性の子育てブーム」牽引。2013年から「児童福祉法改正」に尽力。

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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。

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新型コロナウイルスは日本社会の働き方を根本から変えるのか?

新型コロナウイルスの感染予防対策として、テレワークの導入の動きが加速しています。
これまでもオリンピック開催時の交通対策として、首都圏を中心にテレワークデイなどの取組が進められてきましたが、「IT環境の整った大企業やIT関連企業だからできるのであって、普通の企業には難しい」という風潮もありました。
なぜなら、テレワークで仕事ができるようになるためには、PCや通信の環境だけが揃えばよいのではなく、業務を細かいタスクに分割して見える化し、その進捗を管理していくというスキルが必要だからです。ざっくり担当やノルマを割り振って、サボっていないか様子を見ているだけという昔ながらの仕事のやり方は通用しないのです(自宅での仕事の様子をウェブカメラで常時監視するという力技で古来からの伝統を守り続ける企業もあるようですが)。つまり、仕事のやり方の一部分だけを変えても、相互に補完し合った他の仕組みの慣性力の働きでうまくいかないと言い換えることができます。
しかしながら、今回の感染症対策では、環境が整っていなくても安全上の理由からテレワークが導入されるため、仕組みの間の相互補完性によって、他の仕組みの方が引きずられて変わっていかざるを得なくなる可能性があります。例えば、常時見張って様子を見る代わりに、一日の作業スケジュールを立てさせて、後でその進捗状況を確認するようなやり方です。
そのためには、分割して見える化したタスクについて、それに要する作業時間を見積もるタイムマネジメントのスキルが必要になりますし、管理職には、離れた場所にいながら部下の仕事ぶりをタスク単位で把握し、必要な指示をすることができることが要求されます。
テレワークをきっかけに、一たびそのような仕事のやり方ができるようになれば、同じオフィスで仕事をする場合にも仕事のやり方は大きく変わります。単なる残業抑制にとどまらず、時間当たりの生産性を高めるという意味での「働き方改革」が実現することが望まれます。

★新型肺炎で広がるテレワーク 先進企業に学ぶコツ
2020年2月21日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55869310Q0A220C2KNTP00/

★東京都本庁で「テレワーク」推進 新型肺炎の拡大防止
2020年2月19日 産経新聞

https://www.sankei.com/politics/news/200219/plt2002190027-n1.html

★テレワーク活用や時差通勤などで感染防止へ 厚生労働省
2020年2月23日 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200223/k10012297911000.html

★テレワークでオフィス閑散 チャット、電話「意外に仕事できた」 新型肺炎対策
2020年2月22日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20200222/k00/00m/040/035000c

★時差通勤など感染拡大防止を 厚労相、経済団体に要請
2020年2月21日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55946560R20C20A2EA4000/

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4.イベント情報

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第12回2020年度日本自治創造学会研究大会 最新情報

開催日決定:5月31日(日)・6月 1日(月)の2日間

場  所:明治大学アカデミーコモン棟3階 アカデミーホール
    (東京都千代田区神田駿河台1−1)

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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
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