地方から未来を真剣に考える。

メールニュース

メールニュース一覧

--

【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第25号

< 2018/1/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第25号 ■■

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  上橋 泉(柏市議会議員)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
  第10回2018年度日本自治創造学会研究大会 最新情報

******************************************************************
1.巻頭寸言
******************************************************************
「直言」

          穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 2025年問題(実際には2024年)を目前にした今でも、明確な対応策はどこからも示されていない。
 医療費や介護費の増大にどう対応するのか。生産人口の減少、加速する大都市一極集中と地方の過疎化などの緊急な課題についても有効な手段は出されていない。
 今こそ、高度成長期につくられた様々なシステムを捨て去り、新たな国づくり、地方づくりに取り組まなければならない。

******************************************************************
2.リレートーク
******************************************************************
会員寄稿

「平成の大合併と地方分権に見るこの国の姿」

          上橋 泉(柏市議会議員)

平成の大合併が終って10年が過ぎた。鳴り物入りで始まった大合併ではあったが、これでこの国の姿が変わったのだろうかと考える毎日である。私が平成3年以来、議員を努める柏市でも、自治体の業務、その手法の何も変わっていないように感じられてならない。

私が唯一大きな変化と感じるのは、柏市が平成20年に中核市となり保健所業務が加わったことくらいである。新型インフルエンザが大流行したとき、柏市が素早い対応をすることができたのは、自ら保健所を運営していたからであったと思う。

しかし、これを除いて何の変化も起こっていないと思われてならない。柏市は相変わらず、国の交付金、地方交付税措置のある事業を選びながら事業の選択をしている。その事業が柏市にどうしても必要なものであるかどうかは二次的な考慮になっている。

勿論、柏市独自の事業がないわけではない。子どもの医療費無料化の上限年齢の延長、補助教員の採用、就学資金援助など、全国の多くの自治体で行われている子育て支援関連の単独事業を柏市も他の自治体並みに行っている。これらの事業はどの自治体も深刻な少子化と貧困化に直面して行わざるを得なかったのであり、平成の大合併とも地方分権一括法成立とも何の関係もない。

平成の大合併で自治体の独自財源が増えたわけではない。それと同時期に行われた三位一体改革で独自財源がわずかに増えたが、経済の低迷と少子高齢化で財政を国に依存する傾向は以前より高まっていると感じられる。

リーマンショック時には、全国の自治体が国の金で全国一律の緊急雇用対策を行った。国から事業のメニューが示され、自治体が将来を見据えた独自事業を組み入れる余地はなかった。平成の大合併は、規模の効果による職員数削減を前提にしており、多くの自治体が合併後に正規職員の削減を行った。しかし、少子高齢化などによる事務の増大は、マンパワーの縮減を許さず、定数削減分は非常勤職員と再任用職員の大幅増で穴埋めされた。このように、平成の大合併後も、この国の自治体の姿は相変わらず金太郎飴である。

しかし、平成12年から施行された地方分権一括法の夢は、今でも自治体関係者の心の片隅に残っている。我々は平成の大合併を地方分権の流れの中でとらえていたのだ。その夢は今、加速化する少子高齢化や産業空洞化の不安とも相まって、「我が自治体だけは厳しい将来でも豊かに生き残れる基盤を今のうちから構築しておく必要があるし、それは地方分権で可能である」との思いを生んでいる。

今、その対策として多くの自治体が採用するのは、保育料ないしは子供医療費の軽減ないしは無償化などを通じた若年人口の流入策である。柏市などは、同様の目的のために1,300戸のマンション建設(若い世帯が住むこと想定している)を主たる内容とする柏駅周辺再開発事業を始めようとしている。このような政策は、希少資源となった若年人口の奪い合いとなるだけで、自治体財政を長期的にも豊かにすることはないだろう。

自治体にとっては、新産業で都市が豊かになり、自ずと若年人口も増えて行くのが理想的であるのだが、自治体はそのような政策をとり得るのだろうか?
柏市にある東京大学柏キャンパスは、昨年、国からAI研究開発の拠点の一つに選ばれた。柏市の政策が実を結んだのではなく、東大の理工系の研究機関が15年前から柏市に進出していたからである。なぜ東大の研究機関が柏に来たのかというと、広い国有地が残っていて、そこにつくばエクスプレスが敷設されることになったからである。

千葉県がバイオテクノロジーの研究拠点として木更津市に開発した「かずさアカデミアパーク」も、進出企業がなく一時期は惨憺たる状況であったが、アクアライン通行料の値下げで木更津市の人口が急増し、アカデミアパークをホテルを含む他産業にも開放したところ、用地のほとんどが埋まった。

このように地方の新産業での発展は、自治体の努力を超えた国の政策で決まってゆく。アクアライン通行料の値下げも森田千葉県知事のイニシアティブがあったものの、それすら、国が首を縦に振らなければ実現していない。

日本では1960年代初頭の国土総合開発計画と新産業都市の指定以来、国の主導のもとに地方での新産業が花開き、それが高度経済成長の原動力となった。だから米国のシリコンバレーのような現象は、この国ではまだ起きていない。合併、そして地方分権への取組みを経ても国主導の金太郎飴体制が続き、「国家戦略特区」も先が見えない。

今やいくら国のイニシアティブを望んでも、国の財政は火だるま状態で、国のできることもたかが知れてきたし、金太郎飴的な事業に自治体が持ち出しをしたところで、少子高齢化や産業空洞化に耐え、「我が自治体だけは生き残って行ける」ことにはならないだろう。

では、これから先、自治体はどのような行き方を模索すべきか。それは、国から示された事業や全国のあちこちで行われている事業に「我が町はサービスを上乗せする」というのではなく、「わが町から前例のない事業を打ち出してゆくのだ」という気概をもつことである。

柏市では、近年、急速な高齢化で地元医師会の意識改革が進み、全国に先駆けて医療介護の連携プレーに顕著な進展が見られた。このような自治体のイニシアティブに、これまでの地方分権への取組みの成果が生かされることを期待し、私もその視点で議会活動を進めたい。

【上橋 泉さんのプロフィール】
京都大学法学部卒。外務省から在米大使館付でダートマス大学へ留学、在イラン大使館、在ロサンゼルス総領事館勤務と連続6年間の海外生活。帰国後、亀井久興代議士(元国土庁長官:橋本内閣)秘書を務め、平成3年から柏市議会議員。

******************************************************************
3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
******************************************************************
少子高齢化が進むにつれ、新たな課題として急浮上してきた「人手不足」。
オリンピックを前にした建設業界の人手不足は以前から報道されていますが、他の業種でも深刻化。団塊世代の本格的リタイアによる就労人口減少に産業構造の変化や景気拡大なども加わって、民間だけでなく自治体でも人手不足の解消が大きな課題に。子育てや介護の現場も悲鳴があがる状況になっています。
そこで政府肝いりで登場したのが「働き方改革」、そして「ひとづくり革命」や「生産性革命」。政府の必死さが伝わってきます。もちろん自治体にとってよそ事ではありません。

★「人手不足倒産」が高水準
 2017.07.14 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO18868170U7A710C1000000/

★介護の現場「人材不足を感じる」という職員が97%
~「誰でも入りやすいが、誰でも続けられる職業ではない」~
2017.11.29 キャリコネニュース

https://news.careerconnection.jp/?p=43962

★保育士ヤ~イ 
 ~「保育士就職フェア」求人活動がピークを迎える1月に開催!~
 2018.01.10 ドリームニュース

https://news.biglobe.ne.jp/economy/0110/dre_180110_2022853123.html

★小池知事が大盤振る舞い 月28万円シッター代補助の“盲点”
 ~都知事がベビーシッター利用の補助方針 シッターを確保できない恐れも~
 2018.01.12 niftyニュース

https://news.nifty.com/article/domestic/gendai/12136-435485/

★北海道庁内定辞退者が6割、人手不足が原因? 
 ~人気の公務員でも採用苦戦~
 2018.01.09 (The PAGE)

https://thepage.jp/detail/20180109-00000005-wordleaf

★少子高齢化を乗り越える「人づくり革命」 
 加藤・厚労大臣 新春インタビュー  
 2018.01.09日 福祉新聞

http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/18015

★安倍首相が推進を発表した「生産性革命」「人づくり革命」とは何か
2017.09.25 @人事オンライン

https://at-jinji.jp/blog/10612/

★行政こそ生産性革命を
 ~手続き簡素に 経済後押し~ 編集委員 滝田 洋一
 2017.11.27 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23875450U7A121C1TCR000/

★安倍政権の「生産性革命」をダメ政策の寄せ集めにしそうな3大課題
 岸 博幸:慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
 2017.11.24 DIAMOND ONLINE

http://diamond.jp/articles/-/150616

******************************************************************

4.イベント情報

******************************************************************
第10回2018年度日本自治創造学会研究大会 最新情報

開催日決定:平成30年5月10日(木)・11日(金)の2日間

場  所:明治大学アカデミーコモン棟3階 アカデミーホール
    (東京都千代田区神田駿河台1-1)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都中央区日本橋馬喰町1-12-2タック馬喰町707

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■このメールの受信の停止を希望される方は、
こちらからどうぞ。

http://jsozo.org/?page_id=6

--