< 2019/6/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第42号 ■■
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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭寸言
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
伴 武澄(萬晩報 主宰)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭寸言
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穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
地方議員のなり手がいないと言われている。人口減少国家となった現在、高度成長期における地方の統治システムを抜本的に考える時がきたのではないだろうか。
現状のシステムを当り前だと思っている人が多いが世界的にみると、全ての自治体の長を直接公選すると規定しているのは我が国独特の制度だ。諸外国の多くは、議員の中から首長を選ぶ「議員内閣制」や議会が行政専門職の支配人を任命する「市支配人制度(シティマネージャー制度)」など多様な統治システムを採用している。
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2.リレートーク
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「ちょっと待て! 水道民営化」
伴 武澄(萬晩報 主宰)
今、水面下で国民の知らないところでとんでもないことが起きようとしている。
昨年、12月6日、水道法改正法案が国会を通過、成立した。これまで自治体の事業だった水道の民営化を促す内容で、民営化のためのアメとムチも用意されている。民営化のトップランナー浜松市では昨年4月から下水道事業がフランスのヴェオリア社によって運営されている。
水道事業はこれまで自治体の仕事であり、誰もそのことに疑いをもっていなかった。一方、水道管の老朽化による改修費用が大きな課題として立ちはだかっている。
政府が提案しているのはコンセッションという方式で、民間活力によってコストダウンを図ることを求めている。設備は自治体が保有したまま、運営だけを民間に委ねるという方式で「民営化」ではないと強弁している。どうしても水道の民営化だけは阻止しなければならない。
これまでも政府は空港や港湾などPFI方式による民営化を進めてきたが、特徴的なのは20年、30年にわたり民間に経営を委ねることだ。第一に公営事業の民営化は競争原理の導入が原則なのに、長期にわたって民間に経営を委ねることは競争原理に反する。
第二に水道は、命の源であり生活の糧である。その水を利益の対象にすることに市民の合意が得られるかという問題がある。
第三の問題は水道民営化をこなせる国内企業が存在しないことである。民営化となれば、浜松市の下水道と同様、外国企業の参入を許すことになる。
世界の水道事業を担うウオーター・バロンといわれる企業群がある。フランスのヴェオリアとスエズ。そしてイギリスのテームズ。フランスはそもそもナポレオン三世の時代から民間企業が水道事業を行ってきた特異の歴史を持ち、イギリス民営化はサッチャー首相の民営化路線によって始まった。
90年代に入って世界の水道の民営化が加速したのは、債務問題が引き金となった。国際金融基金(IMF)などによる財政支援の条件となったのが公営企業の民営化だった。おかげでヴェオリアとスエズは世界中の水道事業に相次いで参入することができた。
どこでも問題となったのは水道料金の高騰と水質の劣化だった。民間の参入によって効率化が進んだという例はほとんどない。
このため各国で再公営化がこの10年進んでいる。パリの水道は公営化によって10%以上コストダウンが図られたという。ベルリンは1600億円もの血税を支払って公営化を果たした。イギリス財務省は「民営化のメリットはなかった」として今後、公営事業の公営化はストップすることを決めた。
浜松市では下水道に次いで上水道も民営化する方針だったが、市民の反対運動にあって民営化は頓挫している。しかし、宮城県や大阪維新の会が躍進する大阪では民営化が視野に入っている。
水道の再公営化という世界の潮流に逆らって今なぜ、日本で水道民営化を図らなければならないのか理由が分からない。市民の知らないうちに水道民営化が進められる事態はどうしても止めなければならない。
伴 武澄(ばん たけずみ)
高知市生まれ。東外大中国語学科卒、共同通信社で経済記者。1998年からメルマガ萬晩報主宰。2005年から(財)国際平和協会会長。著書に『日本がアジアで敗れる日』など多数。
2011年、定年退職後、高知ではりまや橋夜学会主宰。
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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地方創生総合戦略 ~第2期戦略は「関係人口」拡大で何を目指すのか?~
思いつきのような事業にまで大盤振る舞いされた地方創生交付金に浮かされた熱も冷めてきた今日このごろ、地方創生総合戦略は本年度で第1期5年の計画期間を終え、来年度からの第2期総合戦略の策定が進められています。
あれほどのカネを注ぎ込んだ成果として、「20年までに東京圏と地方の転出入を均衡させる」としていた目標が達成できそうかと言えば、昨年は東京圏への「転入超過」は約14万人に上っており、23年連続ということですので、地方からの流出に歯止めをかける特効薬はすぐに見つかりそうにはありません。
来年度からの第2期総合戦略では、移住ではなく「関係人口」という新しい概念を持ち出してくるようですが、あれほどKPI(重要業績指標)を重視すると言っていた地方創生ですから、どんな成果指標が目標になるのかが楽しみなところです。新たに統計取ったりするのでしょうか。
なお、第1期の総合戦略策定時には、市町村の戦略の多くが外部委託で作成され、都内のコンサルなどに「循環」していたようですから、コンサルの皆様におかれましては今年も「特需」への対応に追われていることではなかろうかと思料いたします。
★地方創生、流出止まらず苦慮 移住から交流に、第2期総合戦略
2019年6月11日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190611/k00/00m/010/292000c
★人口減社会へ副業・IT 政府が地方創生方針案 先端技術も活用、「関係人口」拡大目指す
2019年6月11日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45951770R10C19A6PP8000/
★「関係人口」増で地方創生 まち・ひと・しごと創生基本方針2019骨子案判明
2019年5月18日 産経新聞
https://www.sankei.com/politics/news/190518/plt1905180011-n1.html
★地方創生計画 外注多数 交付21億円超 都内企業へ
2019年1月3日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019010302000101.html
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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
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