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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第89号

< 2023/5/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第89号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  天本 陸久(早稲田大学政経学部2年)・井口皓介(早稲田大学基幹理工学部2年)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
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1.巻頭言
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        〜第15回 日本自治創造学会研究大会から〜

      政策条例の制定で議会が独自政策を実現する

                       穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 第15回の(財)日本自治創造学会研究大会が明治大学アカデミホーホールを会場として5月24日(水)〜25日(木)に行われました。コロナによるオンライン大会が続きましたが、4年ぶりの明治大学でのリアル大会となり極めて活発な大会となりました。
 大会では様々な研究発表や事例発表が行われました。出生率2.95という驚異的な奈義町の事例報告などもありましたが、今回は埼玉県議会による数多くの「政策条例の提案と設置」についてお話したいと思います。
 埼玉県議会では、ここ数年で30本を超える政策条例を設置し、議会の存在感と政策に強い議会を有権者にアピールしています。議会の過半数を超える単独会派だけの提案であり、「議会の在り方」を考えると、他の会派への呼び掛けなど改善の余地は沢山ありますが、議会が「政策を創る」という一点においては、新しい議会づくりへの挑戦だと言っても過言ではありません。全国一律の二元代表制による地方の運営は多くの矛盾や形骸化を招き、投票率の低下や無投票、議員の担い手不足を招いているからです。
 政策条例の制定手順ですが、会派内で様々な政策の提案を受けた後、取捨選択を行い、内定した政策を条例化し、議会運営委員会にかけ、本会議に上程するという過程で行われています。もとより議会の過半数を超える会派からの提案ですから執行部としては無視できず、予算を後付けしているとのことでした。これらをベースに一歩進んで考えてみますと、議会の全員が様々な議論をした上で「議会」としての「政策提案」を行っていきますと、地域住民に対して政策の立案は「執行部だけの占有権」ではないことを十分にPRすることができるでしょう。
 議会は首長と車の両輪とか対等の関係と言われますが、制度的には首長の権限が強く、ややもすると「地方の運営は首長の力」だけだという錯覚をマスコミはもとより、住民も持っています。「制度改革の必要性」と共に、現行においても出来る限りの議会権限の行使が求められています。「議会における政策機能の発揮」は一般質問で発揮されると言われていますが、今回の事例発表者は「政策選択を首長(執行部)に求める」ことは議会の持つ「政策立案権を放棄するもの」と断言しています。
 地方議会の活性化のためにも、多くの議員・議会が積極的に「政策提案能力」を発揮することを心から期待しています。
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2.リレートーク
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学生の感想〜第15回 日本自治創造学会研究大会〜

                       天本 陸久(早稲田大学政経学部2年)
                       井口 皓介(早稲田大学基幹理工学部2年)

 5月24日、25日の2日間、「日本自治創造学会」の研究大会が開催され、早稲田大の学生に研究大会の感想を書いていただきました。学生たちは学生の政策コンテスト主催団体GEILに属し、日頃国会議員や霞が関の方々との接点しかありませんでした。今回、大会に参加している地方議員の皆さんとの初めての接点でしたが、全国の地方自治体の議員さんやボランティアサポートの方などを含めて300人以上の参加者の熱心な姿を観て、「実際を観ないとわかりませんよね」と言いながら、まじめな方々が多いんだと実感したようです。学生たちは、テレビや新聞で議員さんの不祥事や批判記事などしか知らず、会場でメモを取りながら熱心に聞き入る姿を観て、地方の頑張る事例や熱心に聴講する議員の皆さんに感銘を受けたようでした。
—日本自治創造学会幹事兼研究大会企画委員長西田陽光−

1日目の感想:早稲田大学政経学部2年天本陸久の感想

益一哉氏(東京工業大学学長)のDXを含め、何をするにも、“志”が大切だという考え方に感銘を受けました。学長がどのような、“志”、バックグラウンドを有し、東京工業大学の発展に注力されているか非常に興味深かったです。特に、益学長が、自身の研究で感じられてこられた日本の製品や物事に対する過剰な品質追求についての考え方は、入試問題作成に照らし合わせると理解しやすく面白かったです。また、世間の大学の意義(価値)の捉え方、縦割り行政、官庁の博士課程の少なさについてなどの課題意識にも共感しました。大学統合や女子枠の導入など大きなことを、合理的な判断と合意形成を持って成し遂げられてきたことに、益学長の大学運営の手腕を感じました。理系に進む学生の減少、理系に興味を抱く生徒を増加させるための解決策についても伺いたいと思いました。DXを進めることで、入試業務の負担、大学運営の負担の軽減に繋がれば、より高度な人材育成に尽力できるのではないかと思いました。

石川雄章氏(株式会社Basis Consulting 代表取締役社長)のDXこそ小さな企業、小さな自治体が生き残るためのツールだという力強いメッセージは非常に印象深かったです。石川先生のお話の通り、大事なのは“人”であり、その“人”の志ややる気によって、DXは推進されると思います。「SIMPL」という、地方自治体でも気軽に安く利用でき、ニーズもあったシステムの提供を目指されていることや、地域DXを考える人材の育成にも注力されており、自治体それぞれのことを現場視点で考えようとする姿に非常に感銘を受けました。人を育て、自治力を高め、課題を解決するという流れも、その通りだと思いました。

穂坂邦夫氏(日本自治創造学会理事長・地方自立政策研究所理事長)と田村琢実氏(埼玉県議会議員・元議長)のお話で、数々の議員政策条例を成立させてきたことにまず驚きました。田村議員のお話の通り、埼玉県で成功した条例が全国展開されていくと素晴らしいなと感じました。議員一人一人が政策を考え、主体的に自分で作っていく権限があると考える、“意識改革”が各地で実現されていけば、課題解決が進む地方自治体になっていくだろうと思いました。大切だとお話されていた“課題を見つける視点”を育むために勉学に勤しみたいです。

清水聖義氏(群馬県太田市長)が取組まれた農業用地の工業団地化、給食費の無料化、群馬国際アカデミー設立をはじめとした英語教育の推進等の施策は、清水市長の熱意と献身性の表れであり、そうした積極性に非常に感銘を受けました。時には体制への問題提起、知事との対立をしながらも、市民に寄り添いながら改革を進める姿勢は、市長としての真髄を示しており、その長い在任期間の中で培われた経験と知慧を感じました。

宮元陸氏(石川県加賀市長)のお話は、観光客減少等の問題を抱え消滅可能性都市になりながらも、そういった状況からの脱却のために、スマートパス等の先進テクノロジーの導入、人材の育成といった取り組みをどの市区よりも迅速に推進している点に非常に驚きを感じました。協議会も積極的に行い、成果を示し市民の理解を得る努力も素晴らしいと思いました。また宮元市長がお話された通り、国際社会における競争力と生産性のためにも、人への投資は都市だけでなく日本全国を挙げて取り組むべきものであり、幼児教育や国民全体のスキル習得の重要性を改めて実感しました。

最後に、中村一郎氏(岩手県盛岡市副市長)からニューヨークや世界が注目する地であるとお聞きし、盛岡市の観光政策にワクワクしました。中村副市長からのお話は、市の魅力がひしひしと伝わってくるものでした。海外からの観光客への対応はwifiや翻訳機などDX化が必須で、課題も多い中で、成功されてきたのがよく分かりました。住民や関係者との合意形成を経て、盛岡市を盛り上げていることに非常に感銘を受けました。

2日目の感想:早稲田大学基幹理工学部2年井口皓介の感想

渡部晶氏(財務省大臣官房政策立案総括審議官)が「地域の活性化と組織の自立・連携」の中で話されていた第3期スポーツ基本計画で”スポーツを通じたまちづくり”のお話を聞きました。簡単に言えば、スポーツを通じた地域活性化『スポーツが社会活性化等に寄与する価値』を更に高めるべく、スポーツに「誰もがアクセスできる」社会の実現を目指し、今度5年間で取り組む施策を打つ、というものでした。
しかし、この達成には自治体の努力が不可欠です。私ごとで恐縮ですが、私は高校まで野球をやっていました。野球界には野球を続けたくなくなる障害がまだ色濃く残っています。例えば、坊主文化から始まり、体罰や罰走などです。pleasureのスポーツがいつの間にか辛くなっていくということは、多くの人が体験していることだと思います。これがなくなる自己表現の、pleasureのスポーツになっていくように、今日参加されていた議員の皆様方が奮闘していく未来を期待しながら話を聞きました。

続いて、出生率2.95人口維持のまちづく〜町全体での子育て〜」のテーマでお話された奥正親氏(岡山県奈義町長)のお話で、驚異的出生率2.95の数字と地道な取り組みに驚きました。どんなことも立派な「〜べき」論より地道ながらも着実にやり続ける力が結果をもたらすんだなぁと再認識しました。日頃から西田さんから現場を知れ!実態を把握しろ!具体的取り組みで成果を齎した人から話を聞け!と言われてきましたので、今回の講師陣から学ぶことが多く感じました。

最後のパネルディスカッションではテーマ「自治力を高めるには!」で学会の理事である牛山久仁彦氏(明治大学政治経済学部教授)、後房雄氏(愛知大学地域政策学部教授)、宮台真司氏(東京都立大学大学院人文科学研究科教授)、コーディネーターの西出順郎氏(明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授)の各先生方が、それぞれのご専門からまた異なる切り口からのお話で、刺激的で実に興味深く感じました。
私は理工学部で、今回の諸先生方のようなお話をお聞きする機会が無く、実に興味深く感じました。宮台真司先生のお話しは、知的好奇心がそそられ、是非本を買おうと思いました。また私が所属する学生の政策コンテスト「GEIL」では国に向かった政策提言ではありますが、国民と一番近いところで関わりのある基礎自治体の実態を学ぶ必要性を実感しました。どんな立派な政策立案であっても、基礎自治体と人々が日々の暮らしの中で行動変容無くして社会課題改善につながらないと実感。地方で頑張る人のお話しは実にいい学びとなりました。 
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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マイナンバーカードをめぐるトラブルは制度間の歪みを修正できるのか?

マイナンバーカードをめぐるトラブルが頻発しています。
まずはコンビニで住民票を受け取れるサービスで別人の住民票が交付されるというトラブルが横浜市や足立区で発生し、富士通JAPANのシステムを使っている他の自治体にも飛び火しました。
次に、保険証に別人の情報が紐付けられたというトラブルが発覚します。
さらに、支援金受取口座に別人の口座が登録されるトラブルや、マイナポイントが別人に付与されるというトラブルが発生します。
こういった新しい仕組みの導入時にトラブルが起こると、「そら見たことか、余計なことしなければこんなことは起こらなかった」と言い出す人がいますが、それぞれのトラブルの発生要因を見てみればマイナンバーカードのシステムのせいで起きたとは言い切れません。
住民票については、マイナンバーカードそのもののエラーではなく、マイナンバーカードの認証の仕組みを使って証明書の交付を行うシステムに負荷がかかった際に別人の情報を上書きしてしまうエラーが原因です。保険証の誤登録は健保組合の入力ミスに過ぎず、マイナンバーカードに関係なくとも発生していたでしょう。支援金受取口座やマイナポイントに至ってはログアウトしないまま帰ってしまうという入力者側の初歩的なミスで、ATMに例えれば「キャッシュカードを入れて暗証番号を押した状態で帰ってしまったら次の人にお金を引き出されてしまった」くらいのミスです。
大事なことは、何が原因なのかを冷静に理解し、そのトラブルは新しい仕組みを導入する以前にも許容できていたレベルのリスクなのか、新たなメリットを考慮しても許容し難いレベルのリスクなのかを議論することであり、いたずらに無謬性を求めることは意味がないことに思われます。
願わくは、マイナンバーカードという証明書を使って住民票や印鑑登録証といった別の証明書を紙で出力するという「ピタゴラ装置」のような歪な証明の仕組みをマイナンバーカードなりに集約してこうしたつまらないトラブルが発生しなくなる社会を実現してほしいものです。

★マイナカードで別人の住民票、足立区でも 横浜市で誤交付が判明後に
2023年5月1日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASR515W7GR51OXIE004.html

★コンビニ交付システム停止 富士通、来月4日まで
2023年5月23日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20230523-CNGZA32Z4BOM7BXZEHAVQ2OVHE/

★マイナカード利用のコンビニ住民票交付 不具合で運用停止、再点検へ 河野デジタル相が陳謝
2023年5月9日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20230509-EQJ55XPXUBO3JBMHYCJ3YUN2CU/

★マイナ保険証の点検要請、厚労相 健保組合など別人情報問題で
2023年5月23日 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/251864?rct=national

★マイナンバー、支援金受け取り口座で誤登録 全国で11件
2023年5月23日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231B30T20C23A5000000/

★マイナカードひもづけ口座を誤登録 「ログアウトせず」が原因か
2023年5月24日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASR5S6SJVR5STPJB00V.html

★マイナポイントを別人に誤付与、90自治体で113件判明 総務省
2023年5月25日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASR5T6SB4R5TULFA027.html

★異例の閣僚謝罪ラッシュ マイナンバーカード、顕在化した「ひずみ」
2023年5月27日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASR5V6J0MR5VULFA01Y.html

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4.イベント情報
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

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