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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第76号

< 2022/4/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第76号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  黒田 直美(フリーライター)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
  日本自治創造学会 第14回研究大会開催
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1.巻頭寸言
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見聞を広める

                       穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 市長時代に第一回の記者会見を開いたところ、記者が誰一人現れなかった。真新しい記事がないことを知っていたのかもしれない。
 私は市長に立候補(無投票で当選)するにあたって、いくつかの実現すべき目標と課題をもっていた。小学校低学年25人程度学級やホームスタディ制度の導入、自然再生条例の制定、首長や収入役・教育長の必置規定の廃止、地方自立計画の策定などである。
 全ての目標に挑戦したが、首長と教育長や収入役(現在は廃止)の必置規定の廃止は収入役だけが国によって承認された。しかも必置規定ではなく、都道府県の出納長も含めて全国一律に廃止された。中央集権制度による全国一律の制度改正である。施策の大多数は県議時代における海外視察が大いに参考になった。
 これらの施策の評価は様々だが、第二回からの「市長記者会見」は常に満席状況が続いた。職員の中にある種の緊張感と前例主義から改革への気風が生まれたことが、大きな収穫であった。
 これらの施策に加え、住民のための様々な施策(第2の市役所の設置など)が職員の手によって続々と生まれてきた。施策の実現はもとより、様々な改革に取り組んだ地方公務員の力は国家官僚に劣らないことをこの時強く実感した。ある時、幹部職員から、私が薦めた積極的な先進地の視察や本の購入、外国における地方自治のあり方研究などが大きな知恵の源泉になったとの報告があった。うれしさに舞い上がった記憶がある。ややもすると行政は前例主義に陥りやすい。
 これからの地方自治体は人口減少などの大変化が到来する。諸外国における地方自治のあり方や教育制度などについて、自治体は積極的に先進地や海外に職員を派遣し、新たな制度や施策に挑戦するべきではないだろうか。
 もとより「税のムダ使い」だと言われ、多くが廃止された地方議員の海外視察も復活させ、視察の目的を明らかにしたうえで、積極的に行うことが求められる。
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2.リレートーク
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「地元へ帰って地域のお宝発見!地元の歴史を学び郷土愛を深め、地方のお宝発信で地域活性につなげたい」

                       黒田 直美(フリーライター)

 東京で20年以上、マスメディアでフリーランスのライターとして仕事をして来た私は、これまで地方に取材に行き、地方の魅力や地方創生を発信してきました。ところが3年半前、母親の介護に迫られた私は愛知県小牧市の実家へ帰ることになりました。決断はしたものの当初は何もないと感じていた田舎でしたので、今までのように仕事で刺激を受けることもなくなるのだろうと、不安で暗澹たる気分でした。ちょうどそんな時に、小学館が運営する「日本文化の入り口マガジン和樂web」の地方在住ライターとなりました。地方からも日本の文化、伝統、歴史を発信していくという編集長の考えのもと、地元愛知を含む東海エリアについての記事を書かせてもらうことになったのです。
 そこでまず、私は「地元の歴史ならば小牧山城だ!」と訪れてみると、私が地元不在の間に発掘調査により「織田信長が初めて築城した石垣の城」と実証され、小牧山城の史実が大きく変化していました。学生時代、織田信長の城といえば安土城とされており、小牧山城は小牧・長久手の戦場として、家康が陣を張ったという程度の扱いでしたが、発掘調査により、尾張を統一した織田信長が美濃(岐阜)を攻めるため、永禄6(1563)年に初めて築城したのが小牧山城として認知されるようになっていたのです。また、その形状が安土城に似ていることから、安土城の原型とまで言われるようになり、研究者だけでなく、歴史マニアにも小牧山城は注目されるところとなりました。地元にとって、歴史的根拠のある歴史資産として実証されたこの衝撃は今も忘れることができません。

 高さ約86mの小さな小牧山が全国に知られるようになった一因には、この発掘調査が大きく、これに一役買っているのが、地域の発掘作業員です。多くは定年退職後に、興味のあった郷土史や史跡を守ろうと任務されている方々です。史跡が発掘された時は、大きなニュースとして流れますが、実は1年の半分ほど、コツコツとスコップで土を返すなどの地道な作業を繰り返し、小さな史跡の欠片を丹念に探しています。そうした学芸員と発掘作業員の積み重ねが、今年遂に形となりました。小牧山城の主郭に築かれた野面積石垣の一部の復元が完成。令和4年4月2日に、一般公開となり、ニュースにもなりました。令和7年までには、小牧山城の山頂にある小牧市歴史館を囲む石垣すべてを復元する予定だそうです。このように小さな町に眠るお宝が、町の文化発展に貢献するということを地元に戻ってから、度々目にするようになっています。

 今では、実家のある小牧市をはじめ、周辺の東海地区にある文化歴史関連取材は、感動の連続体験となっています。歴史や地域の伝統文化を知ることで興味と好奇心が掻き立てられました。東京時代の私は今に思えば無知ゆえの傲慢さですが、本当の意味で地方を理解しているとは言いがたかったように思います。私は、地域社会に横たわる遺産の持つ意味や地域の人々との関係までを深く知らずにいたんだと反省し、地域社会の見方も大きく異っていきました。

 私が小牧山城を訪れると、市内の小学生たちが遠足に来る光景などを目にします。子どもたちは素直に地元の歴史に興味を持ち、小中学生を対象とした「こまき検定」で満点を取ったり、将来は「発掘調査をする学芸員になりたい」という子どもたちも増えているそうです。そして何より、故郷の歴史に触れ、先人たちの存在をリアルに感じながら学ぶ体験は故郷への愛着にもつながり、誇りに思うことができると思います。
文化財保護というのは一部の研究者や関心ある人のものと思われがちですが、町の財産として多大な広報効果と地域の人の心の豊さを生み出します。

 これらは私の地元小牧に限ったことではありません。各地に様々な時代の先人の残した遺跡や遺産があります。「地域活性」は長年政府も地方自治体も言い続けてきたスローガンですが、地域の歴史を学んだり、遺跡を発掘したり、調査を重ね、新事実を検証したりすることで、地域の人自身が土地の魅力に気づき面白がっていくことやその価値をちゃんと検証して発信していくことで、地域の人々の心を耕す力になります。そして地域独自のかけがえの無い魅力が構築されることを実感します。今では地元の魅力を掘り下げた発信を心掛けたいと奮闘の日々です。

黒田 直美(くろだ なおみ)
フリーライター

旅行会社、編集プロダクションを経て、フリーランスのライターとなる。旅、グルメ、生活情報やカルチャー、著名人インタビューなどを執筆。現在は、日本文化や伝統工芸、美術などを和樂webや東海圏の芸術文化を発信するoutermosutNAGOYAなどに執筆。震災後、海外のTV番組のコーディネーターとして、東北を中心に全国各地の伝統文化や教育、地場産業等の取材を多くこなす。
和樂web地方自治体×和樂web https://intojapanwaraku.com/feature/chihou001/
outermostNAGOYA 旅するようにARTを楽しむ  https://www.outermosterm.com/
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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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原油高、円安、ウクライナ侵攻——畳み掛ける値上げラッシュで住民生活も自治体経営も大打撃

今年に入って原油高が国政の枠組みも揺らしているところですが、戦争が始まったことで本格的に生活に影響が出始めています。
特に自治体の電力入札は、新電力小売の破綻や入札不調などで大きな影響が出ています。
今後、生活に身近な食品などの値上がりに対して、自治体としても目に見える形での対策が求められてくると思われます。

★松山市の公共140施設、電力契約解約へ 業者「安定供給難しい」
2022年4月22日 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQ4P6D7RQ4PPTLC01V.html

★電気来ない!?自治体困惑 燃料高で「新電力」撤退
2022年4月15日 中日新聞

https://www.chunichi.co.jp/article/453282

★新電力切り替えが裏目、市施設の電気代高騰…従来契約より5000万円増加
2022年4月13日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220412-OYT1T50316/

★自治体電力入札「ゼロ」 燃料高騰 電力会社を直撃 名古屋など
2022年4月16日 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/local/chubu/feature/CO049151/20220415-OYTAT50089/

★23年1〜2月の電力、逼迫のおそれ 東京など7地域
2022年4月12日 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA122Q10S2A410C2000000/

★急速に進む円安 「値上げ」や 「経営への影響」も
2022年4月20日 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220420/k10013591291000.html

★ウッドショックにすしネタ高騰 ウクライナ侵攻で企業の半数「業績に悪影響」
2022年4月18日 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20220418-6ZHMQAYSEBPWNNZKAQENL4SABE/

★金利差拡大、原材料高騰、円安… 三重苦で企業限界、値上げ局面迫る
2022年4月20日 河北新報

https://kahoku.news/articles/20220419khn000053.html

★円安、さらに家計圧迫の恐れ 食品・雑貨、輸入コスト増
2022年04月15日 時事通信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022041401019&g=eco

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4.イベント情報
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第14回 2022年度 日本自治創造学会研究大会開催

[大会テーマ]
変化への挑戦!
〜元気な地方を創り出す〜

日時:2022年5月19日(木)・20日(金)

参加費:会員13,000円(年会費2,000円・2日間大会参加費11,000円)
    ※大学院生会員参加費2,000円(年会費2,000円・2日間大会参加費無料)
    非会員15,000円(2日間大会参加費)
    ※大学院生非会員参加費3,000円(2日間大会参加費)

▼お申込み・プログラム等の詳細はこちら▼
 http://jsozo.org/

お問い合わせ・事務局TEL03−5846−9227
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

東京都千代田区神田佐久間町2−24−301

お問い合わせ: info@jsozo.org

ホームページ: http://jsozo.org
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