< 2019/4/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第40号 ■■
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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭寸言
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
中村 卓(前草加市副市長・日本自治創造学会幹事)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
第11回 2019年度 日本自治創造学会研究大会
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1.巻頭寸言
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穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
統一地方選挙が終わったが無投票と投票率の低下が年々加速し、基礎的自治体の不要論が懸念される。
これらの解決には少子高齢化や都市一極集中を乗り越える地方独自の施策を展開し、住民に訴えると共に広く全国に発信し、自治に対する国民の関心を呼び戻すことが求められる。地方自治は民主主義の原点である。
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2.リレートーク
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~平成から令和へ~自治はどこに向かうのか
中村 卓(前草加市副市長・日本自治創造学会幹事)
私事になるが、この3月で草加市の副市長職を退任した。退任とともに、時代は平成から令和へと移ることとなった。思い起こせば、過ぎゆく平成時代に、草加市政、また自治行政が直面する状況は、様変わりした。令和時代を迎える今、私なりに「平成の地方分権」を振り返ってみたい。
平成時代の前半は、世界的にも地方分権が進展した時期であった。1985年、東西冷戦の緊張緩和を背景にヨーロッパ自治憲章が採択され、これを追うように欧州連合結成への取り組みが始まった。市民・地域に根差す自治を通じて民主主義社会の基礎を育てるとともに、国家間の垣根を低くして、開かれたグローバル社会を築くという、当時の理想を追い求めるものであった。
そうした潮流のもとで、日本では1993年に国会で「地方分権の推進に関する決議」が行われ、2年後に地方分権推進法が成立した。1999年には、国と地方の事務分担や権限の各論に入り込んだ「地方分権一括法」が制定され、法令上、国と地方は対等に役割を分担し合う関係となった。次に地方が期待したのは、地方の独自性や創意工夫を生かせる仕組みづくりと、これを後押しする税財源改革であった。
2001年、国は「官から民へ、国から地方へ」を旗印とする構造改革に着手した。特区や規制改革、地域再生など、地方の創意・工夫を活かす取り組みを進め、これと軌を一にするかのように国が提起したのが、地方への国庫補助・負担金の廃止と縮減、国から地方への税源移譲、地方交付税制見直しの3つを同時に進める、いわゆる「三位一体改革」であった。
使途が特定された国庫補助・負担金を廃止・縮減し、地方が自由に使える地方税、地方交付税などの地方一般財源に置き換えるという税財源面での分権改革を、地方は前向きに受け止め、地方首長有志らによる研究・提言活動も活発に展開された。例えば、有志首長や民間有識者等が集う「21世紀臨調・知事・市町村長連合会議/提言実践首長会」は、その提言で、次のスローガンを提起している。
「分権は、この国を救う玉手箱 ~開ければ負債が減っていく~」
そこには、税財源面での地方自立改革を通じて多様性と活力のある地域社会づくりを進め、同時に国を巨額負債のくびきから解放して、少子高齢社会のもとでも持続可能な国づくりを実現するという基本目標があった。その目標を共有しながら、全国知事会をはじめとする地方六団体は激論を重ね、国庫補助・負担金を大幅に削減する改革提案を行った。
しかし、この三位一体改革は、突然暗転した。それは、目先の歳出削減を優先した国が、肝心の地方一般財源を大幅に削減したことによる。
地方財政白書によれば、三位一体改革の前後で国から地方への支出金の総額は年間およそ31兆円から26兆円に減額された。その際、国は地方に3兆円の税源移譲を行ったが、これと引き換えに4.7兆円の国庫支出金を削減し、さらに5兆円の地方交付税削減を行ったのである。地方が自由に使える財源を削ぎ落とされたことに地方は怒り、本格的な地方分権・地方自立改革への気運は一挙に萎えてしまった。
皮肉なことに、その後、国から地方への財政支出は増加に転じている。直近の支出総額は年間35~36兆円で、10年間で10兆円増えている。この間の増加額の大半は、使途が定められた国庫補助・負担金であり、地方交付税等の地方一般財源は減額された水準のままとなっている。国は、三位一体改革で地方が目指した目標と真逆の道を進んで財政を悪化させ、地方は、国への政策的従属度と財政依存度を高めているのである。
この先、これに「全世代型社会保障」と銘打った国主導の保育無償化などが加わる。財源の裏づけが不十分なまま、全国津々浦々、国が地方自治の分野にはめ込む画一的な国策・支出拡大策は、国と地方の財政をさらに圧迫していくだろう。国は、払いきれないほどの負債を令和の時代に積み上げ、地方は、国のように自由に借金ができないため、多くの自治体で財政的な困窮に直面する可能性が高い。
三位一体改革のとん挫。それがもたらす結果を断定するのは早計かも知れない。
しかし地方は、その直後に国が進めた「社会保障と税の一体改革」とは一線を画した。地方が距離を置いた国主導のこの改革は、目指した目標と直面する現実に大きなギャップが生じ、国の負債を年々増加させる要因となっている。
このように、平成の時代に政府が賑々しく掲げたこれらの二つの「一体改革」は、いずれも竜頭蛇尾となり、国と地方の関係を暗転・反転させ、問題の深刻度を高めて令和の時代へと送り込んでしまっている。どう打開するか、その道筋を国も地方も、まだ示せていない。
8年間、草加市行財政の実務全体に関わりながら感じたことは、税等の一般財源が伸びない中で、国策として降りてくる社会保障や子育て等の追加支出に財源が圧迫され、事務量の増大で大幅な職員増も余儀なくされて、真綿で首を締められている感覚であった。それが私の思い過ごしであることを祈りつつ、平成から令和へ向かう地方自治の前途に、またこの国の未来に、希望への道筋を見出したいと思う。
中村 卓(なかむら たかし)
現職:アコス株式会社代表取締役、日本自治創造学会幹事
前職:草加市副市長、構想日本政策担当ディレクター、内閣府行政刷新会議事務局政策企画調査官、草加市総合政策部長等
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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ふるさと納税制度をめぐるドタバタを追う
政府(総務省)が寄付金控除の仕組み(ルール)をつくり、自治体間の「創意工夫」の競争を促した「ふるさと納税制度」。そのルールの下で知恵を絞り、莫大な税収を得る自治体も現れました。すると政府は、このルールを変えるとともに多額の税収を得た自治体への特別交付税を減額。
「ふるさと納税」については、寄付を受けた自治体からの返礼品サービスなどを巡って導入当初から議論があり、賛否の意見も様々。高額返礼品で税収を増やそうとする自治体への批判を受ける形で、政府は特別交付税を減額するとともに、法改正を予定。ルールに基づいて出した知恵が政府の想定を超えていたことへの慌てぶりが見えます。
しかし、「納税意識に前代未聞のモラルハザードを持ち込んだのではないか」といった、そもそもの疑問に対して、政府の見解が示されたことはありません。
https://www.fnn.jp/posts/00044707HDK 「ふるさと納税でぼろ儲け」疑惑…調査してみたら魅力的な町づくりが見えてきた!
2019年4月12日 めざましテレビ
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201904120000448.html 小池都知事 ふるさと納税の現状に強い疑問
[2019年4月12日 日刊スポーツ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43629320R10C19A4EA2000/
ふるさと納税、東京都が離脱 全自治体で唯一、制度に反対
2019年4月11日 日本経済新聞
https://mainichi.jp/articles/20190323/ddm/002/010/056000c
ふるさと納税 特別交付税、大幅減額「懲罰」色濃く 高額返礼4市町
2019年3月23日 毎日新聞
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190322/k10011856631000.html ふるさと納税が多額な自治体 特別交付税を減額
2019年3月22日 NHKニュース
https://my-furusato.com/nouzei/2017-kakekomi/ ふるさと納税 今後どうなる?改正地方税法で6月規制へ
2019年4月8日 まい ふるさと.com
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4.イベント情報
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≪参加申込み受付中≫
第11回2019年度日本自治創造学会研究大会が開催されます
[大会テーマ]
新時代到来!
~地方はどう生き残るか~
日時:2019年5月9日(木)13:00~17:30
10日(金)9:30~15:25
場所:明治大学アカデミーコモン棟3階アカデミーホール
(東京都千代田区神田駿河台1-1)
▼お申込み・プログラム等の詳細はこちら▼
http://jsozo.org/
お問合わせ・事務局TEL03-5846-9227
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
東京都千代田区神田佐久間町2-24-301
お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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