< 2019/2/15>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第38号 ■■
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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.巻頭寸言
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
塚本 薫(株式会社キャストコンサルティング)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報
第11回 2019年度 日本自治創造学会研究大会 最新情報
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1.巻頭寸言
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「直言」
穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
統一地方選挙が間近いが、地域の再興を直接担う首長・議員の責任は重い。加速する社会環境の大変化に、生き残りをかける抜本的な取組みが求められているからだ。
このような緊急時には地方自治体も一般企業が活用するPDCA方式を採用して、地方の再生方策を明確にしたらどうだろうか。解決すべき地方の課題を設定し、解決のための方策を立案する(P)、次にこれらの方策に基づいて実行する(D)、さらに実行の結果を検証(効果測定・C)し、新たな改善案を立案(A)するシステムである。
企業と異なり自治体の改革は取り返しのつかないことも予想される。実行の前に庁内や議会内で立案したP・D・C・A方式の「シミュレーション」を行うことが不可欠かも知れない。
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2.リレートーク
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介護現場の人材不足を乗り越えるポイント
塚本 薫(株式会社キャストコンサルディング)
今、介護現場は近年まれに見る人員不足・人材不足により、勤務シフト表が作成できなくなるほど絶対に必要な頭数さえ不足し始めている。
残念ではあるが、一部の職員が犠牲になって労働関連法を超えて、なんとか現場を支える悲惨な危機的な状況に陥っているのを目にするようになった。大量退職などにより事業継続困難な施設の話題が何度も報道されている。
市町村に権限が委譲されつつある介護保険の指定基準条例での配置基準は、人数単位である。人数が足りないと条例違反となり、介護報酬が減ることになる。事業所としてはなんとかそれを避けるため、高額の報酬を払い人材派遣業者などを活用して急場をしのいでいる。常に求人募集を行っていても、景気の良い現在の状況では問い合わせすら来ない日々が続いている。
外国人研修生などに期待を寄せているが、今は現在の人員で乗り切っていくしか道はない。人の働きは様々で2倍の働きを見せるひとも入れば、逆に半分の働きとなるひともいる。いかに半分の働きのひとを一人前に育てていくか、組織としては大きな課題である。
サービス業での人材育成のポイントは『ヒト対象のサービス』か『モノ対象のサービス』である。
例えば片付けや清掃活動などの『モノ対象のサービス』であれば、条件に変化がなくほぼ一定のため、マニュアルや手順書通りに行うことで技術も身につけやすく、一定期間で一人前の活動ができるようになる。
一方、「食事介助」や「入浴介助」、「排せつ介助」など、利用者に直接サービスを提供するものが『ヒト対象のサービス』である。例えば食事介助を技術がないまま実施すると、喉に食べ物を詰まらせるなど、命に関わるようなことも考えられる。対象となる利用者によって身体状況は違うため、状況に合わせた様々な対応をおこなうのは非常に難しい。
しかし、例えば『入浴介助』を一連の業務で考えると、脱いだ衣服の片付けは『モノ対象』、新しい下着の準備は『モノ対象』、タオルの準備やお風呂にお湯を入れることなども『モノ対象』と、一括りにすると『ヒト対象のサービス』だと思われる活動の中でも、様々に『モノ対象』のサービスが含まれている。
そこで『ヒト対象のサービス』でも詳しくプロセスを「見える化」することで、『モノ対象のサービス』を区分することが可能である。『ヒト対象のサービス』の区分を厳密に明確にして、『ヒト対象のサービス』をおこなう人材を限定していけば、人員配置の方法も大きく見直すことができる。
『ヒト対象のサービス』はプロフェッショナルサービスに位置づけることができると言われている。このプロフェッショナルサービスを実現する人材の育成では、向き・不向きがあったり、100人育てても、10人しか一人前にできなかったりと、非常にハードルが高いと言われている。
一方、『モノ対象のサービス』はプロセス型サービスに位置付けることができると言われており、マニュアルや手順書に落とし込むことができ、その通りにやれば誰でもが実現できることが多いと言われている。この区分を活用して人材の育成を行っていくことで効果的な人材育成のプログラムを作成することが出来る。まずはプロセス型サービス、つまり『モノ対象のサービス』を中心に人材を育成し、力量があるかどうか人材を見極め、徐々にプロフェッショナルサービスをさせていけば、効果的に育成が可能となる。これは今後、数多く来日する外国人研修生等の育成にも活用できる方法である。
最後に、現在介護保険の基準条例づくりは権限委譲で市町村に任せられつつある。当然指定介護事業所の指導も市町村に任せられつつある。プロフェッショナルサービスとプロセス型サービスとの区分があるということを指導いただき、人員不足・人材不足の状況ではあるが、介護サービスの質の確保に繋げていただきたいと願っている。
プロフィール
塚本 薫(つかもと かおる) 株式会社キャストコンサルティング
1972年生。京都大学経済学部卒。大阪大学大学院人間科学研究科(福祉社会論)博士前期課程修了。医療福祉経営コンサルティング会社設立、NPO法人理事(認知症対応型デイサービス、認知症予防研究)、衆院議員公設秘書、ISO9001主任審査員、上場企業常勤監査役を経験。コンサルティング専門分野は医療福祉人材育成、介護現場の改善・仕組みづくり、内部監査システム構築など。執筆協力「介護職員のための集合研修ツール 事例で考える しごとの心得」(第一法規2019/1/21)
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3.ニュース/情報ピックアップ
地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。
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どう進める「窓口サービス改革」
牢固とした「お役所仕事」の世界。長年の行政改革を通じて、この世界にも少しずつ風穴が開いてきた感があります。行政機関が直接行っていた仕事を民間に委ねたり、公務員でなくとも担える公共サービス分野を増やしたり、事業評価制度などで費用対効果を検証して事業手法を改善したり、というのはその代表例でしょうか。
しかし、行政の「窓口サービス」のあり方については、行政改革のテーマとしてはややわき役の感があり、国・地方の政治の場ではさしたる議論がなく、確たる改革の処方箋も示されないまま推移しているように思えます。
今、社会保障などの公共サービスの変化(メニューの拡大や受給者の増加など)とともに市役所などの窓口サービスの中身は根本的に変化し、対応件数や窓口数は大幅に増加しています。しかし、大方の窓口サービスの手続きは旧態依然。マイナンバー制度は導入されたものの、国が省ごと・制度ごと・事業ごとに定める書式・手順に則った「タテ割り・手書き申請」のアナログ窓口が健在です。
このため、いざ窓口に並ぶことになった住民は、あちこちの窓口を行き来し、同じことを何回も書かなければなりません。現役世代は仕事を休み、高齢者や障がい者、妊婦さんなどには大変な苦労が伴います。専門用語が並び、記入内容は細かく、当然ながら、マンツーマン、時として複数の職員でこれに対応することになり、この仕事に携わる職員(大半は公務員)を年々増員しなければなりません。
こうした状況が深刻化する中で、マイナンバー制度を駆使した国による抜本改革が望まれますが、それを待っておられず、独自に、現行制度下で可能な範囲での窓口サービス改革に取り組む自治体が増えてきました。今回のニューストピックは、この問題を取り上げます。
★窓口改革で住民サービス向上へ ~弘前市役所
2015年6月21日 地域ブランドNEWS
http://tiiki.jp/news/06_column/jireisyu/2686.html
★千葉市-区役所窓口改革
2018年12月29日 千葉市ホームページ
https://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kusei/madoguchikaikaku.html
★草津市業務改革モデルプロジェクト報告書
2018年 4月1日 草津市・総務省
http://www.soumu.go.jp/main_content/000540323.pdf
★窓口業務改革
(総合窓口の導入とアウトソーシングの一体的推進)報告書
2017年2月 鳥取市・総務省
http://www.soumu.go.jp/main_content/000475729.pdf
★総合窓口実現のためのABC
第1回 今、なぜ「総合窓口」なのか?
2007年10月18日 日経XTECH
https://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/COLUMN/20071018/284951/
第2回 役所の窓口業務をどうやって見直すのか
2007年12月3日 日経XTECH
https://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/COLUMN/20071201/288498/
★そのハンコ、必要ですか? カイゼンお役所仕事(1)
2018年12月31日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39460290X21C18A2SHA000/
★子育て申請にため息 多すぎる手書き書類 カイゼンお役所仕事(2)
2019年1月2日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39460370X21C18A2SHA000/
★キャッシュレスは遠い話 カイゼンお役所仕事(3)
2019年1月3日 日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39460340X21C18A2SHA000/
★進む証明書交付機の撤去 進まぬ個人番号カード交付 窓口混み「本末転倒」
2018年12月28日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122802000142.html
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4.イベント情報
第11回 2019年度 日本自治創造学会研究大会 最新情報
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〔大会テーマ〕
新時代到来!~地方はどう生き残るか~
日時:2019年5月 9日(木)13:00~17:30
10日(金) 9:30~15:25
場所:明治大学アカデミーコモン棟3階アカデミーホール
(東京都千代田区神田駿河台1-1)
参加費:会員 13,000円(年会費2,000円、2日間大会参加費・資料代含む)
非会員15,000円(2日間大会参加費・資料代含む)
※大学院生会員参加費2,000円、大学院生非会員参加費3,000円
改革発表会兼交流会(参加費1,500円)
※プログラム内容・参加申込等詳細については後日、ご案内いたします。
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員
東京都千代田区神田佐久間町2-24-301
お問い合わせ: info@jsozo.org
ホームページ: http://jsozo.org
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