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【fromJSLD】日本自治創造学会メールマガジン第19号

< 2017/7/18>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■【 The JSLD News 】日本自治創造学会メールマガジン第19号 ■■

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【目次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.巻頭寸言
  穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)
2.リレートーク
  佐々木 信夫(中央大学教授・日本自治創造学会理事)
3.ニュース/情報ピックアップ
4.イベント情報

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1.巻頭寸言

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「直言」
         穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

 東京都議会議員選挙が終わったが、誰も“地方自治の本旨と現状”について触れることはなかった。地方創生について“宴の終わり”と報道した大手マスコミはあったが、“不成功の本質”については言及されていない。残念でならない。
 加速する少子高齢社会を乗り越えるためには、国と地方の役割分担を明確する“真の仕組みを創る”ことが唯一の方策だと確信している。しかし、この仕組みを実現するためには、地方に関わる一人一人が立ち上がり、市民に分かり易く説明する責任が問われているのかも知れない。

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2.リレートーク

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「小さな村の問題提起‐議会廃止!」
      
        佐々木 信夫(中央大学教授・日本自治創造学会理事)

                  ◇
■議会廃止?――今こそ議会の再構築が必要

今から15年前、平成大合併の盛んな頃、人口1万人未満の町村を「小規模自治体」と呼び、役割を限定した「特例町村」にしてはどうかと議論になったことがある。その時は、小規模を差別するとは何事か、と一蹴に付されたが、今度は人口千人未満のより小規模な自治体で議会を廃止したらどうか、という話が持ち上がってきた。しかも今度は現場の自治体からだ。
1千人未満の自治体は現在、全国に28村あるというが、あと10年もすると人口減少で100にも200にも増えると見られている。あわてて総務省は「あり方研究会」を7月にも設置するという。財政などはもっと深刻だが、ともかく人口減少時代の自治体の存立を問う問題場面のひとつである。
話題の発端は高知県大川村(人口約400人)。ここでは村議会を廃止し、住民総会で自治体の基本的な予算、条例を決めたらどうかと議論が沸騰している。理由は2015年村議選で定数6を超える立候補者がなく、現職6人が無投票で当選し、この先19年選挙も「議員のなり手がない(不足)」という状況が続きそうで、議会を維持できそうにないという理由のようだ。
もちろん、議会の役割、議員のあり方そのものに疑問が投げかけられている世の空気もあり、「なり手不足」のみを理由に議会の廃止論を唱える時代ではなかろう。もとより筆者は、逆に分権化した今、国会の役割を地方議会に相当置き変えたのだから、議会を強化せよの立場。決定者、監視者、提案者、集約者の4つの役割を果たせるような議会再構築を唱えているが。
                  ◇
■無投票による「ゼロ票議会」の存在意義は?

無競争という点では、15年の統一地方選では、全国で21・8%と5分の1以上の市町村がそうだったし、府県議選でも5人に1人が無投票当選だった。何も小規模とか市町村とかに限らず府県でもそうで、人口密度の高い大都市を除くと、似たり寄ったりの状況に来ている。
議員のなり手がないという話は横において、そもそも無競争を「当選」としている便宜上の選挙制度が果して民主主義にふさわしいどうかも問われよう。例外ではなく、無競争が一般化してきているから。つまり当選者も1票も得ていない、有権者も1票も入れていない、そこで「当選」と言われても、果して当選したとされる議員に住民を代表する政治的正当性があるのか。しかも、個々の議員はもとよりゼロ票議員の集まりで組織された「ゼロ票議会」が自治体の公式な政治機関として認知できるかどうか。議会の存在意義そのものが問われる深い話だ。

規模に関わりなく、一律に決められた日本の2元代表制がもはや実態に合わなくなっている証左。これまで議会を単にチェック機関だし、執行権に関わらないことが議会の役割だと解釈し70年も制度改革をしようともせず放置してきた制度設計者らの責任が問われる。先進諸国の「議会制民主主義」の理解は、首長は選挙などで選ばなくとも、議員は選挙で選び、自治体の意思決定の真ん中に座る。執行機関の首長は議長が兼ねる、主要部課長も議員が兼ねる、議会が選抜したシティマネージャーに執行権を委ね、議会がコントロールするなど、日本の首長中心主義ではなく、議会中心主義が普通だ。これが議会制民主主義ではないのか。
                  ◇
■“議会がなくなる”は対岸の火事ではない

その点、日本の首長中心主義はどこか民主主義の観点からするとおかしい。2000年分権改革までは、執行ラインを重視し、知事も市町村長も各省大臣の地方機関とされ、自治体業務の7~8割を国が自治体に機関委任事務の処理として命じ、それには議会は関わるなとされてきた国だから、さもありなんだ。しかし、そうした上下主従の関係は廃止した。その廃止で自治体は10割の業務を自己決定・自己責任に置き変えたはず。にも拘らず、相変わらず、議会を脇役に置いたままだ。
ともかく、こうした状況変化を十分理解できず、議員、首長、有権者、法解釈者らが、総ぐるみで分権化時代に入った自治制度のあり方から目をそらしてきた、草の根から民主主義の仕組みが枯れている実際にも目をつむってきた、といっても過言ではなかろう。
その点、大川村の現場からの問題提起は「特殊な話」ではなく、人口減少時代の「一般的な話」とみて、各地ではどうしたよいか考えるべきだ。特に議会当事者は特別委員会でもつくって議論したらどうか。報酬がどうだ、定数がどうだ、政活費がどうだと議論しているうちに、肝心の“議会がなくなる”事態に遭遇してきたということ、これは対岸の火事では全くない。
                  ◇
■サラリーマンも議員になれる社会を

「議員のなり手がない」という点ひとつみても、問題の根の深いものがあるように思う。
第1.この20年間、経済の実質成長率ゼロのなか、税収も伸びず、政策をめぐる裁量の余地が極めて少なくなり、議員の活躍の場の喪失感が増大していること。
第2.若年、中年層を中心に職業の安定志向が強まり、あえて4年ごとにリスクを追う政治家(議員)に挑戦しようという気概(政治家の魅力も)がなくなってきていること。
第3.議員に選抜される母集団が構造的に狭まっている。サラリーマン社会にもかかわらず、サラリーマンが議員職を兼ねることができず、勢い自営業者か無職者のみの戦いになっている。事実上、8割近くを占めるサラリーマンが公職につくこと排除していること。
第4.報酬の削減が続き、経済的な魅力に欠け、また相次ぐ定数削減で新人の出る余地が狭まり、現職優先、現職の議席既得権化が進み新人の当選可能性が低下していること。

この状況を変えることができるかどうか。というのも、どう見ても今後「議員のなり手不足」は深刻化しよう。相当な大ぶりの抜本的選挙制度の改革でもしない限り、競争率が上がり、無投票当選がなくなり、女性議員や若手議員が増え、地方議会が活性化していくという道筋は見えてこない。例えば、本業は会社員として生活費は稼いでいただき、社会奉仕として公職としての議員活動ができるよう、土日・夜間開催議会へ議会の置き位置をシフトするとか、年齢別の当選枠の設定や女性比率を定めるクオータ制(割り当て)の導入など、いろいろ考えられる。
基本は、何といっても8割近くを占めるサラリーマンが議席を持って議会活動ができる仕組みに変えることができるかどうかだ。そこが最大のポイントで、会社員の労働法制を変えること(公職休暇制度)や、時間を夕方の「5時から議会に変える」などの改革が急務ではないか。
                  ◇
■自治体の民主主義の形は一つではない

もとより、この話をしていても大川村などが提起している小さな村の議会の継続か廃止かの答えにはならない。話を初めに戻すが、要は予算や条例の決定、執行機関の監視、また住民の民意の反映は「議会」という装置を通さなければできないのかどうか。議会は絶対必要かどうか。議会制民主主義(代議制)の考え方は直接民主主義の形態を採ることがむずかしい規模に膨れた都市部で持ち上がってきた歴史がある。とするなら、代表を置かなくても、小さな村では直接民主主義の原点に帰って、有権者が一堂に会する「住民総会」を開くのも正しい選択だ。
公選議会制は廃止し、年1回住民総会で当該自治体の基本事項を決定する。公選の首長に予算編成、主要契約、条例作成など全権を委ね、総会決定後の行政の執行活動をチェックする集落代表(輪番制)の「評議員会」をおいてもよい。問題のある首長は住民総会で解任できるようにする。実費弁償で集落別に出てきた評議員が4半期毎に行政を統制したらどうか。
その方が無競争当選の政治的正当性を持たない議会(疑似議会?)に委ねるより、民主的であり、住民の参加意識、政治的な問題意識も高まるかもしれない。大川村の実験を見守りたい。

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3.ニュース/情報ピックアップ

地方自治に関係する気になるニュースをピックアップします。

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~問われる二元代表制下の議会~

日本では、国は議員内閣制、地方は全国一律に議会と首長の二元代表制が採られていますが、これは主要国では日本だけ。全国一律の定めは、憲法第93条2項「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」との規定によるものです。

しかし、過疎に直面する地方の中には、議員のなり手がいないなどの問題が深刻化。議会を廃止しようという動きが出てきました。

一方、都市部では、議会・議員の役割がよく見えないとの有権者の声や、首長と議会の「政争」問題が後を絶ちません。首長による行政執行をチェックするべき議会側がむしろ受け身に回っている例も目立ち、先の都議選では、長年都政を支えた都議会自民党が大きく議席を減らしました。

「二元代表制」下で“存続”と“信頼”が問われている地方議会。そのあり方について議会・議員サイドの幅広い議論と問題提起が必要な状況にあるように思えます。

★議会廃止し「村総会」検討、正式表明=実現には課題山積-高知・大川村長 (時事ドットコムニュース)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017061200344&g=pol

★町村議会廃止 -直接民主制「将来検討」4割- 
議員定数10未満の154町村 毎日新聞調査に回答

https://mainichi.jp/articles/20170529/k00/00m/040/055000c

★どう考える、地方の「議院内閣制」
国の議院内閣制と地方の大統領制、内政上重要な論点(久元喜造神戸市長ブログ)

http://hisamoto-kizo.com/blog/?p=808

「都議会って本当に必要なの?」
第237回J.I.フォーラム   自分ごと化会議第1弾 2017/07/20(木)開催

http://db.kosonippon.org/forum/index.php

「小池都知事、いい加減にして!」 「豊洲」で勝間氏、橋下氏の批判相次ぐワケ

https://www.j-cast.com/2017/03/22293724.html?p=all

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4.イベント情報

イベント情報をお知らせするコーナーです。
掲載希望のイベントがありましたら、編集委員(info@jsozo.org)ま
で御一報ください。
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発行:日本自治創造学会
編集:日本自治創造学会メールマガジン編集委員

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お問い合わせ: info@jsozo.org

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